終末少女兵器ZERO【惑星探索】
文字数 2,245文字
宇宙船に乗り、惑星を調査するのが私の任務です。
宇宙船と言っても、一人が乗れるだけの小さなモノで、私はコックピットで寝た状態で宇宙船を操作しています。
操作には手を使わず、自分の意志で宇宙船を操作可能です。
食事は必要ですが、口から食べ物を摂取するのではなく、体に直接チューブが挿入されていて、今の私の体調に必要な栄養分を定期的にチューブから摂取することができます。
排尿と排便も行いますが、それも体内に挿入されたチューブから、外部へと排出されます。
便や尿も貴重な資源なので、その糞尿はろ過などがされたのちに私の栄養になります。
この宇宙船は無駄な物は少なく、長期間調査できるように最適化されています。
操作も自分の意志で可能なので、手足が不要な私には四肢はありません。
口も食事をする必要がないので、口もありません。
言葉を発したい時は、自分の考えを外部へ伝えたいと思うと、宇宙船が通信で母船に連絡してくれます。
目も必要はありません。宇宙船のカメラが私の目の代わりになってくれるからです。
そう思うと、私は生まれてきた時の姿から、様々な部位を削ぎ落としこの宇宙船に乗っているのだと、改めて思いました。
しかし、その点に付いて私はあまり疑問を持ちません。
それは私の目的が惑星の調査のみだからです。
長い調査の旅で私はある惑星を発見しました。
その惑星はとても青く、私は美しいと思いました。
そして調査の為、私は惑星に向かいました。
大気圏に無事に突入すると、青く美しい海や緑が豊かな大地が、カメラ越しに私の脳に写りました。
私は素晴らしい発見をしたのです。
これで、私達は移住できる惑星を見つける事ができたのです。
私の見た光景は母船に通信され、後に母船はこの惑星を訪れるでしょう。
惑星を調査していると、街らしき場所を確認できました。
いや、この惑星は至る所に人工の建物が無数にあります。
どうやら知的生命体が存在しているようです。
私は知的生命体との遭遇マニュアル通り、隠密状態で調査を進めました。
知的生命体がどのような存在か、はっきりするまでは接触しないほうが懸命です。
友好的な場合は良いのですが、好戦的な場合には何をされるかわかりません。
その時、私の宇宙船の背後から何かが追ってきました。
どうやら、この惑星の知的生命体も飛行型の乗り物を所有しているようです。
しかも、隠密状態の宇宙船を確認できる程に、高度な文明があるに違いません。
その飛行物体は私の宇宙船の後ろにピッタリとくっついてきます。
私はここは回避した方が良いと考え、スピードを上げ飛行物体から逃げる事を決断しました。
飛行物体は宇宙船のスピードには追いつかず、私は無事に飛行物体を巻く事ができました。
しかし、少し油断をしてしまい、前方にある大きな山脈に宇宙船を接触させてしまいました。
操作の一部が不能になり、うまく飛行できず宇宙船は少しづつ落下し始めます。
そして、地面へと宇宙船は墜落してしまいました。
落下速度を減速できたおかげか、私の命には別状はありません。
しかし、これ以上私は惑星を調査する事ができなくなりました。
私が落胆していると、宇宙船のハッチを「ガツン、ガツン」と叩く音が聞こえます。
どうやら何者かがハッチを開けようとしています。
宇宙船のカメラで確認しようとしましたが、カメラの視界外の為、姿は確認できません。
そして、ついにハッチを開けられてしまいました。
宇宙船の内部にはカメラがないため、ハッチを開けた生物がどのような姿をしているのかはわかりません。
しかし、宇宙船のマイクから会話の口調は聞き取れました。
言語がわからない為、会話の内容はさすがにわかりませんが、荒々しい口調と暴力的な行動から、どうやら好戦的な知的生命体だと思いました。
私達がこの惑星に住むには、この知的生命体は危険な存在になるだろうと、母船に連絡したのです。
きっと母船が来たら、この危険な生物を全て排除してくれ、私達の住みやすい惑星にしてくれるはずです。
私の任務はこれで終了になります。
私は後に続く者の為に、とても有意義な情報を母船に送る事ができました。
とても満足した人生を送る事ができました。
最後にやるべきことが、1つあります。
私達の情報をこの惑星の知的生命体に知られる前に、私と宇宙船を処分しなければなりません。
母船の仲間よ、あとは頼みました。
1947年7月上旬、アメリカ合衆国のニューメキシコ州に宇宙船が墜落しました。
それから約70年後、人類と地球外生命体の存亡を賭けた戦いが始まったのです。