花見日和

文字数 905文字

 このミッションは過酷だ・・・。

 今は春。私は今、お城に来ていた。
 この季節になると私の出番となるのだ。
 そう私は今日、大学のサークルの花見の場所取りに来た。
名前はそうだな、清正とでも呼んでもらおう、あくまで仮の名だ。戦国武将の名を騙りたくなる程、私は今気合が入っていた。
たかが場所取りぐらいで・・・。
と思うなかれ。
 これにはありとあらゆる秘策と、そして駆け引きが必要なのだ。

 都会の人達、特に関東地方なら名所旧跡が大体ポジションだろう。この町でも同じ事だ。
 この町には、日本三大名城に数えられる城がある。その堀の周りでも桜は見られるが。
 殆どの人が、天守閣近くのポイントを争奪するのだ。勇壮な、お城に桜。何とも時代絵巻を感じる事が出来る。皆、お殿様とお姫様になって。
 ういやつじゃ、お戯れを、あっははは。
と言いたくなるのだ。

 私がこの場所取りを始めたのは、大学1年の頃よりだ。既に今年で4年生になるのだから、後輩に任せれば良いのだが。
 こんなところにも、後継者問題が頭をもたげていた。
後輩はつまらん!まったく分かっていない。
だから皆、お前に任せるよ鰯山(いわしやま)と指名されるのだ。

しまった、名前が出てしまった。まあ、良い。
 いやいや、苛めやその手の類では無い。
これは名誉な事なのだ。
皆の期待を一身に背負い、良い場所を取り。
皆が、流石先輩、凄いよとか、楽しい!とか、言ってくれる、この快感がたまらないのだ。
 アハハ、やるぞ皆!待ってろ。

 だが、開門前1時間でやって来た私の目の前に、ブルーシートを手に手に持つ、猛者共が目に入った。今年は多いな・・・。
私は緊張して武者震いがした。
 折からの小雨、夜には上がるが、新規の客は来ないだろう。
つまり、今日を逃せば来週になる、会社関係が多い。敵ではないな・・・。
 私は1人ほくそ笑んだ。

 私が羅生門に屯する、亡者の様な集団に身を踊らせると。黒尽くめの警備員が言った。
お並び下さい。何と彼らは羅生門に貼り付いておるのではなく、並んでいたのだ。
 (はぜかた門と言う名だった、確か?羅生門ではない)
 だが、その風貌はいかにも、お前には負けないぞと言う、気迫と気概があった。

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