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文字数 900文字

 未だ後継者もなく、あんたらも場所取り名人の名を、襲名し続けているんだな。
 俺は一瞬、彼らに同情してしまった。
 まずいな、いつもにもまして感傷的だと、最後尾に並ぶと。
 後ろから、ガラガラと台車に荷物を積んだ、サラリーマン風の男が並んだ。
 馬鹿げている、素人だな。
 お城というのは、歩いても走っても、疲れるように出来ている。ましてや台車など、ガタガタと上下して荷物など散乱するだけだ。

 私は私の後続が、それに脚を取られるのを想像してニヤリとした。
 これは僥倖、後続は無い!
 あはは、我に勝算ありだ!
 あとは前にいる者が、如何なる秘技を持っているかにかかっている。
前から3人は常連だ。前にも見たことがある。
こいつらは無視して良かろう。
先に入られては、如何なる方法も無駄だ。
それを知ってか俺を見てニヤニヤ笑っていた。

 ふん、お城は広い。しかも桜は気紛れ。
どのポジションが最適かは、時の運もあるさ。
簡単には敗けないよ。俺はニヤリと笑い返した。そして、私がどうやって前にいる者達を出し抜くか、又はどのルートを通ろうか、考えていると。後ろから声がかかった。

「タバコ、吸っても良いかな?」

 えっ?俺はタバコを吸わない。
大体、この手の並びでタバコを吸うとは。
 だが私は、

「どうぞ」

と振り返り言った。
 彼は、30そこそこのサラリーマンだった。
人懐っこそうな笑顔を、俺に向けた。
 馬鹿な、素人も甚だしい。タバコは肺活量に影響を与える。大抵、仕事(場所取り)が終わるまで吸わないものだ。
なのに今、吸うとは。俺はこの男を30メートルは離せるなと思った。
 すると、その男携帯灰皿にタバコの灰を落としながら。

「ああ、花見は良いけど。場所取りがなぁ〜。
参った、待つのも辛い」

とぼやいた。ダメダメ、ぼやいている暇があれば、如何に良い場所を取るか、シミュレーションしなければ。まったくなってない。
 で俺は、しまった!と思った。
今日は雨が降ったのだ。
天気予報通り雨は上がった。
しかし、水溜りが出来ている!
昨日の雨なら職員さんが、砂を撒いて窪みを無くしている可能性もあるが。
さっきまで降っていた雨だ。
 俺は、とんでもない失策を犯していた。
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