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 その頃には後続が、次から次へとシートを広げ。最早、最善の場所など無くなっていた。

「フーっ何とかなった・・・」

と汗を拭いて思い出した。
俺達の場所を取り忘れた!しまった!
 砂や風で狼狽えてしまった。
最早トイレ前か離れた広場しかないだろう。
と悄気げていると先輩が、

「有り難う。助かったよ、ビール飲まない?」

と私にビールを渡した。
 クーラーボックスに入っていたので、かなり冷えていて美味かった。
 だが失敗だ、
これでは何の為に来たのか・・・。
と思っていると、先輩が電話をしながら、何か言っていた。先輩は俺に向ってこう言った。

「参ったよ、雨降ったから中止だと思って、
10人来るか来ないか。君等の場所何処?
一緒に飲まない?」

と何とも有り難い事を仰有ってくれた。
 俺は一も二もなく。

「ありがとう御座います。お願いします。
自分達の場所、取るの忘れてました」

と正直に言うと。

「アッハハハ!」

と笑われた。それから俺は、後から現れた先輩の会社の人や、大学のサークルメンバーと共に楽しく花見をした。
 先輩の会社の女の人が、料理を持ってきてくれていて。大学の花見より豪勢なものとなった。
 さて、花見も終わろうとした頃に。
隣にいた先輩が、

「君、4年生だよね、就職は?内定貰ってる?」

と聞いてきた。
 残念ながら、こんな馬鹿な事ばかりをしているので。まだ仕事は決まっていなかった。
 その事を話すと、笑いながら先輩は。

「じゃ、うちに入りなよ。履歴書持ってきて。
採用決定!俺、人事部長だから」

と名刺を渡された。
この街で中堅クラスの中々良い会社だった。
 俺は名刺を握り締め。

「有り難う御座います!」

と頭を下げた。すると先輩は、

「じゃ、来年の場所取りも頼むね。期待しているよ」

と、ニヤリと笑った。
 アハハ、やられた・・・。
 それから俺の花見の場所取り戦線の
第2ステージが始まったのだ。
勿論、仕事もちゃんとしてますよ、はい。

 終わり。
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