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文字数 998文字

 そこで俺は、何とか窪みが何処にあったかを、必死で思い出していた。
 そうだ、私は何回か下見に来ているのだ。
滑りやすい石畳のルートを探ったり、城と桜のコントラストの良い場所を調べてあるのだ。
だが水溜りは想定外だった・・・。
 私の大学生活最後の場所取り、有終の美、
千秋楽を、こんな形で終わらせるのか?
 私はまるで風に舞う桜吹雪の様に、
心が舞った・・・。すると件の後ろの男が、

「君、大学生?俺も良く来たな大学の頃。
何処?」

と聞かれた。私はシミュレーションと窪みを考えていたので、気もそぞろに。

「カルデラ大学です」

と答えてしまった。すると、

「何だ後輩か。俺もだよ」

と、その男はニコッと笑った。
 しまったぁ!この男、この手で私を使うつもりだったな。
たとえ、その話が本当だとしても。
ここは戦場に同じ。何の世話にもなってない、先輩を立てる理由など無いのだ。
 と私が焦っていると、前の連中がニヤニヤと笑った。愚かめと言う顔だった。
 ク、クソッこのままでは・・・。
で、私はこれは乱戦にして、ゲリラ作戦に出た方が得策かもと閃いた。
 そこでニヤリと笑うと、

「そうですか先輩。では、一言言わせてもらいますね。その台車の荷物、石畳でバラけますよ。ここは砂利だし、その辺りまでコンクリートで舗装されてますが。門をくぐれば石畳の道で登りで、更に2回曲がります。台車は不利ですよ」

と言った。前の6人(そう、俺は7番目だ)
が驚愕の目をしてこちらを見た。
 俺は、ふふふと笑うと。

「中身はなんですか?ああ、ロープ持ってきてますね。それで縛った方が良いですよ。
ところで、何人の花見ですか?」

と聞いた。すると、

「20人、参ったよ。これは乾き物のつまみと俺が待ってる間、飲むビールが入ってる。
ビニールシートもね」

「分かりました。兎に角、ビニールシートは出して。荷物は縛りましょう。場所は私が取ります。私は7人なので直ぐ済みますから」

と言った。まったく20人なんて大所帯。
お堀の回りなら楽なのに、素人め。
 この手の花見は、10人以下がセオリーだ。
それ以上は天守閣近辺か、トイレの側か桜から離れた場所しか取れはしない。
 兎に角、水溜りは無視して、20人分の場所をキープすれば。その回りに俺達の場所が取れるだろう。20人分のブルーシートだ、戦略的にも他者の進行を阻害出来る。
 成る程、その手があったか・・・。
と俺は、シミュレーションを繰り返した。
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