文字数 450文字

ニ匹の犬は手の中を空にして吊り橋の前までやってきました。
先程まで心地良く感じていたそよ風がとても冷たく思え、渡るのが怖くなります。
鞄一つだった犬が言いました。
「怖くなくなる魔法があるんだよ」
両手一杯だった犬は訊きます。
「どんな魔法?」
「それはね、君とぼくが手を繋ぐんだ。そうすると、勇気が湧くんだって」
「どうして知っているの?」
「さっき鳥さんたちに教えてもらったんだ」
鞄一つだった犬はそれを伝えようとしたのですが、両手一杯だった犬は聞こうとしなかったのです。
ニ匹は手を繋ぎ、吊り橋に足を踏み入れました。
吊り橋は風にゆらゆら揺れています。
下は何処まであるのか検討つかないくらいの深さ。
けれどもニ匹は前を見て、一歩一歩進みました。
互いの手を決して離さず、強く握り締めて渡ります。
渡り終えると、ニ匹は地面に倒れ込みました。
そして互いに目を合わせ言いました。
「君がいなかったら、ぼくはここまで来られなかったよ」
「君が手を繋いでくれたから、ぼくはここまで来れたよ」
手を繋いだまま、ニ匹は仲良く頂上に立ちました。
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