文字数 874文字

そうしていくうちに、遠くに頂上が見えてきました。
「やったぁ」
二匹は喜びました。
けれど、すぐ手前で驚きます。
吊り橋があります。
なんだか弱そうな吊り橋で、風に揺れています。
両手一杯の犬はあたふたと焦り始めました。
「どうしよう。ここまで来たのに、こんな壊れそうな橋、渡れないよ」
すると鞄一つの犬は言いました。
「ぼくたちニ匹くらいなら渡っても壊れない、大丈夫だよ」
「どうして分かるんだい?」
「さっき お猿さんたちに聞いたんだ」
鞄一つの犬は先程出会った猿達に、吊り橋のことを聞きいて知っていたのでした。
それを伝えようとしたのですが、両手一杯の犬は聞こうとしていなかったのです。
「だから荷物はここに置いていこう」
鞄一つの犬の提案に、両手一杯の犬は顔を強ばらせて叫びます。
「ここに置いておくだって?冗談じゃない。どれも大事なものばかりなんだ、置いていけるわけないじゃないか」
「そうかな?君の荷物はそんなに大切な物が入っているの?」
「当たり前だ」
「じゃ、僕に見せて」
両手一杯の犬は荷物の中身を広げました。
いろいろな場所の土、おもちゃやがらくた、えんぴつや本・・・出てくる出てくる。
先ほど摘んだ花やその種、何本もの水筒も出てきました。
「こんなに詰め込んでいたの?」
鞄一つの犬は次々出てくる多くの荷物に目を丸くしました。
「ぼく、君とずっと一緒にいるけど、鞄から何か取り出すところを見たことがなかったよ。だから、一体何が入ってるんだろうって、いつも不思議に思ってたんだ」
この言葉に、両手一杯の犬はふと考えました。
えっと、この土はどこのだったかな?
あっちのおもちゃで最後に遊んだのはいつだっけ?
この花はどこで摘んで、この種はどんな花が咲くのだろう?
両手一杯の犬が考えていると、鞄一つの犬は言いました。
「ぼくは覚えてる。このお花がどこで咲いていたか、水筒の水はどんな川のものか。全部、心の中に残ってるよ」
鞄一つの犬は持っていた鞄を地面に置きました。
「ぼくはこの鞄置いていく。でもね、どうしても置いていきたくないものがあるんだ。それは君。だから、ぼくと二人で一緒に橋を渡ろう」
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