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文字数 433文字

 時間の経過だけは感じられた。
 まるで猛烈な台風が通り過ぎていったあとの様相である。
 人気のない公園。植えられた木はことごとくなぎ倒され、フェンスがグニャグニャに歪んでいた。
 ブランコの鎖は半数がちぎれ、なぜか彼愛用のバイクが滑り台のてっぺんにあった。
 足元には白いヘルメットが転がっていたが、見上げると例の男がジャングルジムの上で、おどおどした様子で息絶え絶えに、こちらをうかがっていた。
 引き回されたのか、真っ白だったジャージが破れ、泥だらけになっている。

 どうやらまたやっちまったらしい。
 家族皆が逃げ出し、誰もいなくなった家の中の荒れ果てた光景が目ぶたの裏でフラッシュバックする。
 本当に、本気で酒飲むの止めなくちゃあな。
 おいらこそ変身しなくてはならない。
 が、アル中は、もう一生治らない病気らしいね。だから正義の味方を名乗る彼の本性を揶揄している場合でもない。
 時折やってくる、酒でしか癒せない渇きと、今後どう向き合っていくのか、それに尽きるんだろうな。
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