文字数 334文字

 しばらくにらみ合っていたが、やがて土を蹴る音がして彼が、キモいとしかいいようのない笑い声を立てて飛びついてきた。
「ひゃーはっはっは!」
(来る!)
 おいらはタックルと予測して、とっさに仕込んであったバーボンの瓶を腰の辺りに構える。
 鈍い音がした。
 彼はしたたかに額を打ちつけ、よろめいたかと思うと、声もなく後ろへ仰向けにぶっ倒れた。
 それから、ぴくりとも動かなくなった。

(や、やったのか?)
 おいらは、恐る恐る男のそばに寄った。
 やり過ぎていたら、過剰防衛でおいらの方が警察に捕まってしまう。
 彼は、口を薄く開けて力の抜けた状態で、どうやら気絶しているようだった。
 今のうちに逃げてしまえば、何ごともなく済みそうだが、頭の打ちどころが悪いとさらに面倒になりそうである。
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