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文字数 367文字

 おいらが足元に目を戻そうとすると、彼はそそくさと包みを出して開けた。
 中身は缶ビールのようだった。
「おいらは、もう飲まないことにしたから」
 そう首を振ると、彼は「そう言うと思ってノンアル買ってきました。味はほとんどビールと変わんないすよ」と差し出してきた。
「ぜひ冷たいうちに」

 目の前の卑屈な男を見ていると、なんだか彼は彼で大変なんだな、という気もしてきた。
「今度はこういうことがないようにね」
「はい! すみませんでした!」
 半分は自分に言い聞かせるためにいったのだが、彼はしきりに頭を下げていた。

 これを観ている子どもたちは何を思うだろうか。
 大人は大変だね、と言いだすだろうか。
 でも、キミらも皆、遅かれ早かれ同じものと向き合って生きていかなくちゃいけないんだぜ。
 なるべく酒なしで。
 おいらなら片目を閉じて、そう言ってやるさ。
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