(三)‐5

文字数 466文字

「ところで、絵はありましたか」
 大橋は署轄の新人刑事よりも絵の方に興味があるようで、周囲を見回すこともなく、絵について尋ねてきた。
「あ、ええ、一枚ありました。結構派手な色使いの絵が」
「そうそう、それそれ。重要証拠品として預かります」
「どうぞ、持って行って下さい」
 鉢山がそう言った。
 続けて上原が段ボール箱の中の拳銃の包みと弾薬の箱が入った段ボールを中身が見えるように大橋へ見せて言った。
「これも持って行きますか」
「拳銃か」
「これがあれば銃刀法でもいけますね」
 小柄な東山が言った。
「ああ、一昨日逮捕したあいつになら、な。でもあいつらは俺らが追っている『怪盗広尾』ではないだろう。手口が違う」
「そうですね」
「広尾の物ではないだろうが、ともかく全部押さえよう」
 大橋は少し考えてから、そう言った。
 「了解です」と言って東山は上原から段ボールを受け取り、置いてある段ボールの上に載せ、三つまとめて持ち上げた。段ボールは高さ、幅、奥行きともに二〇センチ前後だったので、三つまとめても小柄な東山が持ち上げるのは問題がなさそうだった。

(続く)
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