(四)‐3

文字数 458文字

 鉢山と上原は署に戻った。鉢山は倉庫係に聞いてみたが、絵の押収物は預けられてはいなかった。
 また、署長や副所長はもちろんのこと、捜査一課長や他の署員にも須賀という女性警官のことを尋ねて回ったが、皆一様に「知らない」の一点張りだった。
 さらに、鉢山と上原、それと刑事課長と鉢山らの直属の上司である捜査一係の係長が署長に呼ばれてけん責を受けた。県警から苦情が来たのだそうだ。もちろん証拠物品を紛失したことが主な内容だった。しかしそれに留まらず、見知らぬ人間を捜査現場に連れて行ったこと、そして拳銃などを署の方で押収しなかったことについても咎められた。『怪盗広尾』の件は県警のヤマかもしれないが、窃盗団の物と思われる拳銃については、署の方で担当すべきだったというのだった。
 確かに怪盗と今回の窃盗団についてはそれぞれ別案件だ。切り離して考えるべきだったのだろう。くどくどとした署長の話を聞きながら、鉢山はそう考えた。怒られながらも狐につままれたような不思議な感覚を、鉢山はその後数日間ぬぐい去ることができなかった。

(続く)
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