心の耳

文字数 420文字

 先生は胸を触る。
 静まり返った教室は空気が固く張り詰めている。異様な緊張感だ。そこで観葉植物を置いてたなら、その緊張感をシオシオに変えてしまうに違いない。
 跳ね除ける?逃げる?受け入れる!どうしよう!と思ったが、そんなのはどうだってよくなってきた。逃げたところへ立ち向かったところで、起こったことを消せないからだ。
 じっと我慢しているけど、手が上着とシャツの隙間を通って伸びた。手が自由に動き回る。体温を感じたいが、お互いが温度の違いをそこで知ることになる。人は体温が暖かい。その暖かさが侵入すると、芯に溶かされる。争うということで、何か無駄なことを感じてくる。だけど、先生を抵抗しないわけにはいかない。
 「やめないでください!」
 声で緊張感に固まった空気が裂けた。その裂け目、冷たい。周囲が注目する。
 麗しの慶子先生が自分で胸を揉むのをやめた。見つめる僕たちは息を呑んだ。一体これは何を見せられているんだろう?これからどうなるんだろう?
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