第2話

文字数 1,070文字

いつもの事を普通にしていたら、わけもわからずぶつけられた。
なにかぶつかりそうなものなんて、まったく心当たらない。
この説明がまずかった。

相手は「追い越しをしてて」「ブレーキ間に合わなかった」と言ってるし、下り坂の上の方で追い越しをして、止まってるに等しい僕の車を避け切れなかったんだろう。
現場にブレーキ痕はない。

現場は僕が出て来た道が登り坂鋭角に国道に合流し、振り返る様に視認する為にかなり見づらい。
だから、停止線からアクセルを踏まない程度に動きながらしっかり確認してから2∼300メートルは見渡せる直進車との距離を測り、どうしても直近左右折になる為、アクセルを踏まず、対向車が来れば停止して右折待ちをする。
この間長くて10秒、短くて5秒程か。

対して相手からも、数百メートル手前まで下り坂のカーブが続き、そこで追い越しするには前方の対向車が見づらい。
現場の2~300メートル手前くらいで直線になり、追い越ししたくなる場所ではある。

だから、「追い越ししてて」ってワードをそう捉えた。
これはかなり客観的な視点と思われ、誰かに事故状況と「追い越ししてて、ブレーキ間に合わなかった」って相手の言葉を聞かせると、「じゃあ、間にもう一台いたんだ」と言われる。
今となっては、その相手に追い越された車が居て、名乗り出て証言してはくれないか?と思う。

現場に来た警察官にも状況説明で相手が「追い越ししてて…」と言ったと言うと、「追い越し?ここ追い越し車線ねーぞ」いや、そもそもが追い越しの為のはみ出し禁止のオレンジラインの下り坂である。
ブレーキを踏まなければ80kmは出てしまう。
自分の何がなんだかわからない印象と合せて、僕は相手が追い越ししてスピード出し過ぎた為にのろのろ右折しかけていた僕の車が急に目の前に現れる形になったのかな、と思ったし、警察官も、動いちゃってたから10:0にはならないね、と言っていたし、こちらの車が大きいし、相手は確実に全損だから、少し過失大きくなるかも、と言っていた。
とにかく、自分が急に道路を塞いだつもりはまったくなく(20kmで急に車線を塞げるのだろうか?)相手の速度超過や悪質な運転で起こった事故だろうから、ことさら主張して自分を利するよりも、多少過失高くなっても仕方ない、相手も自分も無事でなにより、入院しないで済んで仕事したいな、等と考えていた。
それに、頭を打ったせいか、動転なのか、見えない何かが降って来てぶつかって来た様な、本当に何故・どうやって事故が起きたのか、わからなかったし、あの時は思い出せなかった。

甘かった。
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