第3話

文字数 1,248文字

いくつかの検査は異常なく、奥さんに迎えに来てもらう間待つのもと、炎天下飯田の街を歩いた。
相手に安否確認の電話。
相手も検査は異常なし、良かった。
警察から電話。
僕の過失が大きいから、明日現場検証に立ち会えないか?と。
相手からはこれから警察来てもらって状況説明を聞くから、それ次第では必要ないかもしれない。
わけがわからなかった。
とにかく高圧的で、僕がなんか言おうものなら「ゴネてる」みたいな扱い。
不安になって保険屋さんに電話しても、「国道の流れを急に遮断したわけだから」と、取り付く島がない。
奥さんに話すと、「何それ?!」と怒っていた。
しかし、まだその時は記憶が飛んでいた部分があり、正直な印象は、「まず飛ばして来る車多い場所だから、確認はしてるし、それで大丈夫だから出ながら振り返って対向車が居ない事を確認、右折ポイントまでウインカー切り替えながら対向車の確認をして、右折の為にもう一度対向車を確認して、いざ右折。右折する為に対向車線の右折レーン横切る形にどうしてもなっちゃうな、とか思ってた…、あ!」
そうか、僕は少なくとも数秒間国道に居て、右折を始めた時に対向車も居ない、ガードレールも遠い安全な筈の場所で右からぶつかられたから、何がなんだかわからなかったんだ。
衝突箇所、事故後の停止位置とも整合性があるし、相手の吹っ飛び方は、こちらが止まってるに等しいスピードでしか動いてないのに派手だ。
しかも、僕はアクセルを踏んで居ない。
後でレッカー屋さんに問い合わせたら、停止後いきなりエンジンが吹けたのは、アクセル横のボディーの歪みがアクセルを踏んでしまっていたそうで、アクセルに足乗せてたら挟まれていただろう。
まあ、その事もその時は知らずに、何より僕には一切見えていないんだから、後ろからぶつかった相手が見た事を頼るしかない。
相手にドラレコが付いている事を願おう。

夜に再び警察から電話。
「とりあえず相手は人身にしないで良いって言ってくれてるんで…」
「そりゃあ、お互いに良かったです」
「いや、あなたにとって良かったんだと思いますよ」
加害者扱いが強まっていた。
「相手の方の説明だと、まず追い越しなんて事はどこでもまったく起きてません。急にあなたが出て来たから避けようとして、対向車線に出てしまい、それでもあなたが塞ぐ様に右に動いたから避け切れずにぶつかってしまったんです。」
「いやあ、相手もかなり飛ばしてたと思うんですけど。色んな人から、あんなの相手が悪いらーって言われてるから、僕もちゃんと話さないと」
「それを、誰が証明出来るんですか?そんな噂はありますけど、あそこはみんな飛ばすから、ってイメージで。現場検証必要なくなりましたけど、現場検証して白黒はっきり付けましょうか?」
語気が荒い。
「わかりました。僕の記憶が曖昧だから、今現場検証したところで仕方ないですし」

本音は、こんなに断定的に加害者扱いされた状況での現場検証は無意味だ、だったが、言えなかった。
心象を悪くして不利になるかもしれない、とも思った。
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