第1話
文字数 2,535文字
異世界に飛ばされたレイカは、依然として軽度のPTSDの症状を呈していて本調子に戻っていない様子だ。そのことをヨウコが気を使って話し始める。
そう言って二人の頬は緩み笑い合って、いつもの調子に戻ってきたのかいつぞや話題にしていた、Net Blicksのサブスクドラマ「恋するメンフェラキャンパス」のその後の展開についての話をし始めた。
ドラマについては助蔵さんお願いします。
心配したタクトは彼女の姿を探した。公安勤務の実兄の力を借りて失踪たセイナの交友関係を中心に身辺調査しているうちに、彼女のアパートは渋谷区宇田川にあったが、失踪して以来そこには立ち寄っていないことがわかった。実家は世田谷の自由が丘だか、それの他にも別邸があり、都心から離れた武蔵野のとある住宅街にあることがわかった。
周辺の防犯カメラ映像を当たったところ、セイナと思われる人物の姿が京武線沿いの某駅の改札口の防犯カメラに捉えられているものを見つけ出した。
失踪した原因は皆目不明だったが、タクトの兄のより詳細な調査によって、どうやら彼女の生まれである富等井家には他言出来ない人類に対する冒涜的な恐ろしい何かがその家系の背後に横たわっていることが透けて見えて来るのだった。そしてタクトはそれによってセイナ自身が幼少期から特殊な環境の家庭で育ったことを理解するのだった。
富等井家はもともと、大日本帝国時代華族であった由緒正しい旧家であり、セイラの曾祖父は東京帝大医学部を首席で卒業したのエリートでその名を富等井晶蔵と言う。彼はまた別名細菌部隊を呼ばれた731部隊から枝葉を分けた別動隊に所属していた。
彼は米軍に絶対防衛圏を破られ窮地に窮地に陥る神州日本の起死回生を狙い開発されていたある必死兵器の完成を至上命題とするその研究所の長でもあった。
晶蔵の孫に当たるセイナの父もまた、帝大医学部の副医学長を務めるエリートだった。
しかしそのせいなの父もまた、半年前に突然医学部を自己都合で依願退職していて、その後の行方が不明だった。
つまり娘であるセイナま父とほぼ同時に失踪していたのだ。
その調査を担ってくれた警察組織のエリートである実兄は、この富等井家の父娘の相次ぐ失踪には闇を孕む巨大な背景があると察知して、タクトに「深入りするな」と忠告するが、タクトは彼女を探すために週末になると目的もなくただ京武線の電車に乗り、沿線の各駅で降りてはの姿を探すことを繰り返していた。
孤独に探し続けるタクトだったが、時間だけが虚しく過ぎ去っていった。
諦めかけていたある日、余暇時間を使って京武線の立川駅から東京への登り電車に乗っていた。某途中駅に停車していた電車の扉が締り、再び発車した直後にタクトは自分の目の前のプラットフォーム彼女が駅改札に向かって歩いてゆく姿を見つける。時遅し彼女に声を書けることが出来ない電車と共に過ぎゆきてしまう。