第1話

文字数 2,535文字

いつも通り学校を終えたヨウコとレイカが村山台駅に向かって下校中だ。

異世界に飛ばされたレイカは、依然として軽度のPTSDの症状を呈していて本調子に戻っていない様子だ。そのことをヨウコが気を使って話し始める。
「レイカあれからけっこう経ったけど調子どう?」
「うんあの出来事がさぁ・・・たまに夢に出て来るんだ」
「悪夢で夜中に起きちゃうみたいな?」
「そんな感じ・・・」
「そっかぁ・・・確かに話しても誰にも理解されないよなぁ。私もレイカ意外あの時のことは話してないし」


「あっそうだ!YouTuberのキー&ウッシーがいたんでしょ?私が騙されて戦争の世界に行っちゃった後に」
「うんうん。彼らはいいヤツっぽい感じだったよ。でもあのいかれた老人に散々な目に遭ってたけど、結局はちゃんと元の世界に帰れたよ。でも二人とも気絶してさ、その後私はレイカを救出にいったでしょ?だからその後のことはわかんないんだよね。でも今もYouTuberとして活動してるみたいだから元気なんじゃない?」
「私その動画見たよ。『異世界にワープしたら魔法使いの爺さんにネズミにされてしまいました』みたいな内容なんだけど、視聴者は急な方向性の転換だと思って戸惑ってるみたいだった」
「リツイート狙いのモキュメンタリかまたはガチで出した創作ネタか思われるよね。どっちにせよコメ欄荒れそうだ」

「そうだよね。本気でそんな話すればするほど頭がおかしいって思われちゃうよね・・・」
「まあね。でも彼らはYouTuberだからさ、話のネタが一つ増えたくらいで結果オーライって感じじゃないの」

「うんそうかもね。でも考えてみればさ、まだヨウコがいるだけ救われるよ。助けてもらってなんだけど、こうして話せる相手がいるって大事だよね」
「私にとっても同じだっての。レイカが帰ってこれて本当によかった」
「だよね・・・。たしかに生きて帰れただけでラッキーなのかも」

「そうそう。命あっての物種とかいうでしょ?なんかあれば私に話してよ」
「ありがとう!てかやっぱヨウコって勇者かも。私はバカは付けないよ」


「誰だって!バカ勇者って呼んでる奴は」

そう言って二人の頬は緩み笑い合って、いつもの調子に戻ってきたのかいつぞや話題にしていた、Net Blicksのサブスクドラマ「恋するメンフェラキャンパス」のその後の展開についての話をし始めた。


ドラマについては助蔵さんお願いします。

「恋するメンヘラキャンパス」の主人公の女子大学生の富等井セイナと、サークルの先輩である四方木タクトとの恋は進展するどころか、彼女の姿はキャンパスから消え音沙汰なく数週間が過ぎた。

心配したタクトは彼女の姿を探した。公安勤務の実兄の力を借りて失踪たセイナの交友関係を中心に身辺調査しているうちに、彼女のアパートは渋谷区宇田川にあったが、失踪して以来そこには立ち寄っていないことがわかった。実家は世田谷の自由が丘だか、それの他にも別邸があり、都心から離れた武蔵野のとある住宅街にあることがわかった。


周辺の防犯カメラ映像を当たったところ、セイナと思われる人物の姿が京武線沿いの某駅の改札口の防犯カメラに捉えられているものを見つけ出した。



失踪した原因は皆目不明だったが、タクトの兄のより詳細な調査によって、どうやら彼女の生まれである富等井家には他言出来ない人類に対する冒涜的な恐ろしい何かがその家系の背後に横たわっていることが透けて見えて来るのだった。そしてタクトはそれによってセイナ自身が幼少期から特殊な環境の家庭で育ったことを理解するのだった。



富等井家はもともと、大日本帝国時代華族であった由緒正しい旧家であり、セイラの曾祖父は東京帝大医学部を首席で卒業したのエリートでその名を富等井晶蔵と言う。彼はまた別名細菌部隊を呼ばれた731部隊から枝葉を分けた別動隊に所属していた。


彼は米軍に絶対防衛圏を破られ窮地に窮地に陥る神州日本の起死回生を狙い開発されていたある必死兵器の完成を至上命題とするその研究所の長でもあった。


晶蔵の孫に当たるセイナの父もまた、帝大医学部の副医学長を務めるエリートだった。

しかしそのせいなの父もまた、半年前に突然医学部を自己都合で依願退職していて、その後の行方が不明だった。

つまり娘であるセイナま父とほぼ同時に失踪していたのだ。


その調査を担ってくれた警察組織のエリートである実兄は、この富等井家の父娘の相次ぐ失踪には闇を孕む巨大な背景があると察知して、タクトに「深入りするな」と忠告するが、タクトは彼女を探すために週末になると目的もなくただ京武線の電車に乗り、沿線の各駅で降りてはの姿を探すことを繰り返していた。



孤独に探し続けるタクトだったが、時間だけが虚しく過ぎ去っていった。



諦めかけていたある日、余暇時間を使って京武線の立川駅から東京への登り電車に乗っていた。某途中駅に停車していた電車の扉が締り、再び発車した直後にタクトは自分の目の前のプラットフォーム彼女が駅改札に向かって歩いてゆく姿を見つける。時遅し彼女に声を書けることが出来ない電車と共に過ぎゆきてしまう。

「セイナ!!」
ガラスに両手を当てながら叫ぶタクト。
「!!」

驚くセイナ。

そんな展開を迎えた恋するメンヘラチャンパスについて話をしていたヨウコとレイカの二人はいつも通り村山台駅方面に向かう途中で、レイカが言う。

「やっぱりタクトがセイナを目撃したシーンのロケ地がこの村山台駅だとおもうよ!だってこの店の看板もドラマの中でも映ってたし」

「私そこまでちゃんと見てないからなぁ。でも確かに言われればそうかもね」
電車に乗るタクトが、窓ガラスに張り付き彼女を必死に目で追うシーンから、車内のタクトと目が合い眼を大きく開いて驚くセイラが焦ったように踵を返して、いそいそと改札から出て行こうとするその後ろ姿を追う劇中の背景をよく見てみれば、それは間違いなく村山台駅だとわかるはずだ。
そんな時タイミング好いのか悪いのかわからないが、ヨウコのスマホにマユカから電話がかかってくる。

「どした?」
「先輩!先輩!また凄いネタ発見しました!!今回もあの廃墟ビルディングなんですけどぅ」

「マジか・・・」
To be continued.
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登場人物紹介

芹沢ヨウコ。都立雛城高校二年生。実質なにも活動していない茶道部所属。紙の本が好きで勉強も得意だが興味のある事しかやる気が起きないニッチな性格のため成績はそこそこ。根はやさしいくリーダー気質だが何事もたししても基本さばさばしているため性格がきついと周りには思われがち。両親の影響のせいか懐疑派だが実はオカルトに詳しい。

水原レイカ。都立雛城高校二年生。芹沢ヨウコとは同級生で友人同士。弓道部所属して結構マジメにやっている。母子家庭で妹が一人いる。性格は温和で素直。そのせいか都市伝説はなんでも信じてしまう。ホラーは好きでも恐怖耐性はあまりない。

唯々野マユカ。都立雛城高校一年生。性格は明るくルックスよき。故に男子生徒から人気がある。それを自覚した振る舞いの出来るしたたかな面もある。弓道部所属で、”赤い目の女”編と天国と地獄”編に出た水原レイカの部の後輩。適当に入った部なので、皆からそのうちやめるだろうと言われている。レイカつながりでヨウコと知り合い一部からバカ勇者と揶揄されるヨウコのズバズハ物を言う気の強さの反面さばさばした感じのギャップを感じ、変なあこがれを抱いている。

コタロー。村山台の若い雄の地域猫。もともとナレーター系猫だったが、"天国と地獄"編で遭遇した始祖人類から能力を開花されて神視点を手に入れたことで、場所に関係なく遠隔ナレーションことが可能になった。

富等井セイナ。恋するメンヘラキャンパスのヒロイン。

四方木タクト。恋するメンヘラキャンパスの主役富等井セイナの大学の先輩で恋人役。

君島キリト。怪異SEEKER-Keye(キー)&UCCy(ウッシッシー)というYouTuberのコンビで愛称はキー坊。ディレクションかつカメラ担当。映像クリエイーターを目指しエンタメ系の専門学校にかよっているなか、高校時代の友人だった牛山シオンと組んで動画配信を始めた。YouTube登録者数17万人のチャンネルを運営していて、視聴者の投稿を頼りに全国の有名廃墟や、未発掘のいわく付き物件を探しては遠征している。

牛山シオン。怪異SEEKER-Keye(キー)&UCCy(ウシッシー)というYouTuberのコンビで愛称はウッシー。MC担当。テンションの高さとフィジカルの強さが自慢。ピザ屋の配達と引っ越し業で鍛えた体で各地の危険な場所にも前のめりに潜入する肉体派。YouTuberとして有名になった後でも、引越センターに頼りにされおり、筋トレ代わりに引っ越し業でこなしている。

この辺りのボス猫で結構な年齢のオス猫。名前は助蔵。コタローの後見人的な存在でもある。

店員。

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