第2話 邂逅
文字数 4,200文字
「エルフの女性はそうして世界を旅しました。天才魔術師の生まれ変わりを探して探して、でも見つかりませんでした。そして、旅を始めてから二千年経った今も、この世界のどこかで天才魔術師の生まれ変わりを探し続けている、という話だ。いやー、先生はこの物語を初めて読んだ時は涙が止まらなくてね……ちょっと失礼。また涙が……」
そう言って、教壇に立っているキャメロン先生はハンカチを取り出して涙を拭く。
……こんな作り話をマジになって読むなんて、頭おかしいんじゃないのか?
そんな自分でもひねくれていると思うような事を考えながら、物語の挿絵に落書きをする。
俺の名前は、アイゼア。ギーギル王国にある第五魔術高等学院に通う高校二年生だ。
ありとあらゆるものに魔術が使われているこの世界では、誰もがどこかしらの魔術学院に通い、魔術の勉強をする。
ちなみに、この第五魔術高等学院は、ギーギル王国に五つある魔術学院の中でも……最下位の偏差値を誇る学校だ。まあ、おバカさんが来るようなところと言っていいだろう。
で、そんなところに通っている俺だったが、成績は中の上。
……もとい、中の下……いや、下の下だ。おそらく下から数えたほうが早いだろう。
ということで、俺は誰もが認める出来損ないというわけである。
そんな俺は、先生の話を一切聞かずに、さっきから物語の文章の途中に出てきた天才魔術師のイメージ絵に落書きをしているわけだ。
「……何が『天才魔術師』だよ。魔王と相打ちして死んでるとか天才失格だろ。それにこのエルフも頭おかしいんじゃないのか? ったく、イチャイチャしやがって、ムカつくな……!」
「……ン゛ン゛! アイゼア君。もう一度、言ってもらえるかな?」
「だから、天才魔術師なのに魔王ごときに相打ちで死んでいるとか……あっ……」
ようやく自分が置かれている状況を把握し、落書きを止めて頭を上げると……こめかみに血管を浮かべたキャメロン先生とジト目で俺の事を見てくるクラスメイトが目に入ってきた。
……おっと、こいつは不味い。
「……いやー、素晴らしい物語ですね。なんというか……ハートフルっていうか……まあ、そんな感じですよね!」
「……アイゼア君。放課後、職員室に来なさい」
先生が持っていたチョークを粉々に砕きながら俺に死刑宣告を言ってくる。
…………さいですか……
「失礼しました……」
言われたとおり放課後に職員室に言って、キャメロン先生からたっぷりと三時間説教を食らった後、俺はトボトボとした足取りで誰もいない自分の家へと帰る。
両親? あの人達はとっくの昔に死んだよ。他に誰か頼れるひとはいないのかだって? いたらこんなにグレていねぇよ。
帰り道、自販機からジュースを一本買って、それを飲みながら家に向かって歩みを進める。
買い食いとか本当は駄目なのだが、どうせ誰も見ていないし、別にいいだろ。
一気にジュースを飲み干した後、近くにあったゴミ箱に空き缶を放り投げて捨てる。
ものの見事に空き缶はゴミ箱の中に……入ることはなく、明後日の方向へと飛んでいって、フードを被ってうずくまっていた人の頭にカコン、という音を立てて当たる。
……やっべぇ……見るからに怪しそうな人の頭に当てちまったよ……
ここらへんは治安が悪いからなぁ……怒られる前にさっさと逃げーー
「ちょっとそこのあなた。私にゴミを当てておいて逃げるつもりですか?」
逃げようとした俺に、フードを被った人が声を掛けてくる。
声から女性だということが判断できた。
……良かった……怖いおっさんとかじゃなくて。
見た目は怪しいが女性だと分かったので、逃げるのは止めて謝罪と共に空き缶を拾うためにフードを被った彼女に近づく。
「……いやー、すみません。当てるつもりはなかったんですけど、ちょうど俺が空き缶を放り投げた時に風向きが変わりましてね。俺のせいではないんです。風が悪いんです。なので、怒るなら風に怒って下さい」
清々しいまでのクズ発言をしながら謝罪と言えない謝罪をして空き缶を拾う。
「……あなた、そんな態度ばかり取っているといつか後悔することに……」
フードを被っていた怪しい女性は、小言を言いながら俺の方を見てきたかと思えば……目を大きく見開いてフリーズする。
……なんだ? 時間でも止まったのか? いや、でも風は吹いているし、雲は流れているからそうではないだろう。
じゃあ、心臓発作で死んだのか? それにしては苦しむ様子は無かったよな。
頭を捻っていると……突然、怪しい女性が俺の腕を掴んできた。
「――うぉおい! 何のつもーー」
「――ご主人様! ご主人様ではありませんか! 私です! あなたの奴隷のケイティです!」
バサッとフードを下ろして彼女は顔を見せてきた。
薄暗い道でも光り輝く金色の髪に、人間とは違う長い耳。
どうやら彼女は、今となってはかなり数を減らして、世界に二人いるかどうかと言われているエルフらしい。
……いや、ありえないな。こんな訳の分からんところにエルフがいるわけがないじゃないか。どうせ何かのイタズラだろう。
俺は必死に彼女の手を振り払おうとする。
「いきなり何を言っているんだ! ケイティ? 知らんぞそんなやつ! 誰かと間違っているんじゃないのか!? それにあんた、エルフじゃないんだろ!? 作り物の耳なんだろ!」
「そんなはずありません! あなたは紛れもなく私のご主人様であるアイゼア様です! 声も、顔も、体も! ご主人様そのものなんですから! それに、私は本物のエルフです! ほら、作り物の耳がこんなに高速で上下に動くと思いますか?」
彼女は見た目にそぐわない力で俺の腕を掴みながら、耳を高速で震わせる。
ぐっ……確かにマジモンの耳じゃないと出来なさそうな芸当だな……
って……ちょっと待て。なんでこのケイティと言ってきたエルフの女性は俺の名前を知っているんだ?
一旦彼女の手を振りほどくのを止めて、質問をする。
「なあ、なんで俺の名前を知っているんだ?」
「知っているも何も、あなたは私のご主人様だった天才魔術師アイゼア様の生まれ変わりなのですから、知っていて当然です。巷で耳にした輪廻転生の話は本当だったのですね……。まさか声、顔、体、それに名前まで一緒だったなんて……でも、記憶の方はない様子ですね……」
じーっと俺の事を透き通る目で見てくる。
……くっ……綺麗すぎて顔が熱くなりそうだ……耐えろ……耐えろ……!
しばらく見つめてきた彼女だったが、何を思ったのか突然俺に抱きついてきた。
「お、おい! 俺が生まれ変わりだとか輪廻転生とか、訳の分からんことを喋った挙げ句に抱きつくとはどういうことだ! 娼婦か!? 娼婦なのか!?」
「…………」
彼女は無言のまま、背中に回した腕に力を入れてきて……あ、やばい! せ、背骨がおれ、折れる……!
「わ、悪かった! さっきの発言は撤回するから背骨を折ろうとするのは止めてくれ!」
しかし、彼女は力をさらに強めてくる。
や、やばい……謝っても許してくれないほど激怒させてしまったというのか……!?
バタバタと腕を必死に動かしてなんとかして逃げようとあがいていると……彼女が口を開いてきた。
「……昔、同じことをご主人様にしたことがあるのですが、同じ仕草で逃げようとしていました。……記憶が無いのは残念ですが、あなたは紛れも無く私のご主人様であるアイゼア様です。やっと……やっと見つけました……三千年……あなたの帰りを待って三千年……ようやく、ようやく……愛しのご主人様に……」
力を抜いて、彼女はグスングスンと俺の胸に顔を埋めながら泣き出してしまった。
どれもこれも胡散臭い話なのに、彼女の話を聞くうちに胸の奥が何故か少しだけ熱くなってくる。
……いや、これは彼女に少しだけ同情したと言うか、彼女の迫真の演技に心が少しだけ、ほんの少しだけ動かされてしまっただけだ。
十分程抱きしてめられたままでいると、彼女が抱きついてきたまま上目遣いで俺のことを見てきて、
「……これからはずっと、ずーーーーっと一緒ですからね? たとえ記憶が無いのだとしても、生まれ変わったご主人様のお傍にいますから……」
そんなことを言ってきた。
あっ……やばい……めっちゃ可愛い……っていかんいかん! 騙されてはいけないぞ!
俺は自分の心に喝を入れながら彼女に答える。
「何度でも言ってやる。俺はあんたのことなんて知らん! そんな演技に、嘘に騙されんぞ! あんたはーー」
「ーーケイティと……そう呼んでください……」
あっ……可愛い……じゃなくて! ああもう! そんな幸せそうな顔で見られたら調子が狂うだろうが!
しかし俺は思春期の男子高校生。思わず口が滑ってしまう。
「け……ケイティ……」
「はい、ご主人様……」
……やばい……やばいやばいぞ!
なんかいい感じの雰囲気になってきて、流されそうになっているぞ……しっかり、しっかりするんだ!
そんな俺をよそに、ケイティはなおも抱きつきからの上目遣い、トドメに瞳を潤ませながら、おねだりをしてくる。
「……今日からご主人様と一緒に住んで、一緒に暮らしてもいいですか?」
…………これはもう駄目ですわ……
俺は観念し、首肯しながら『仕方ないな〜』と言う。
いやー、全く覚えがないし、天才魔術師の生まれ変わりなんてそんなことあるわけがないが、こんなに綺麗で健気な女性に言い寄られたらもう仕方ないよね。そっちの勘違いだと言っているのにここまで言い寄ってくるなら向こうが悪いよね。
俺の返事を聞いたケイティは、嬉しそうな顔をしながら俺のほっぺにキスをしてくる。
おほっ……やっば……彼女の唇超柔けぇ……
「今日はほっぺで我慢しますね!」
俺から離れて、舌をぺろっと出しながらそんな事を言ってくる。
そんな感じで、出来損ないの俺は、自分のことを天才魔術師の生まれ変わりだと言ってくるエルフのケイティと一緒に暮らすことになった。
そう言って、教壇に立っているキャメロン先生はハンカチを取り出して涙を拭く。
……こんな作り話をマジになって読むなんて、頭おかしいんじゃないのか?
そんな自分でもひねくれていると思うような事を考えながら、物語の挿絵に落書きをする。
俺の名前は、アイゼア。ギーギル王国にある第五魔術高等学院に通う高校二年生だ。
ありとあらゆるものに魔術が使われているこの世界では、誰もがどこかしらの魔術学院に通い、魔術の勉強をする。
ちなみに、この第五魔術高等学院は、ギーギル王国に五つある魔術学院の中でも……最下位の偏差値を誇る学校だ。まあ、おバカさんが来るようなところと言っていいだろう。
で、そんなところに通っている俺だったが、成績は中の上。
……もとい、中の下……いや、下の下だ。おそらく下から数えたほうが早いだろう。
ということで、俺は誰もが認める出来損ないというわけである。
そんな俺は、先生の話を一切聞かずに、さっきから物語の文章の途中に出てきた天才魔術師のイメージ絵に落書きをしているわけだ。
「……何が『天才魔術師』だよ。魔王と相打ちして死んでるとか天才失格だろ。それにこのエルフも頭おかしいんじゃないのか? ったく、イチャイチャしやがって、ムカつくな……!」
「……ン゛ン゛! アイゼア君。もう一度、言ってもらえるかな?」
「だから、天才魔術師なのに魔王ごときに相打ちで死んでいるとか……あっ……」
ようやく自分が置かれている状況を把握し、落書きを止めて頭を上げると……こめかみに血管を浮かべたキャメロン先生とジト目で俺の事を見てくるクラスメイトが目に入ってきた。
……おっと、こいつは不味い。
「……いやー、素晴らしい物語ですね。なんというか……ハートフルっていうか……まあ、そんな感じですよね!」
「……アイゼア君。放課後、職員室に来なさい」
先生が持っていたチョークを粉々に砕きながら俺に死刑宣告を言ってくる。
…………さいですか……
「失礼しました……」
言われたとおり放課後に職員室に言って、キャメロン先生からたっぷりと三時間説教を食らった後、俺はトボトボとした足取りで誰もいない自分の家へと帰る。
両親? あの人達はとっくの昔に死んだよ。他に誰か頼れるひとはいないのかだって? いたらこんなにグレていねぇよ。
帰り道、自販機からジュースを一本買って、それを飲みながら家に向かって歩みを進める。
買い食いとか本当は駄目なのだが、どうせ誰も見ていないし、別にいいだろ。
一気にジュースを飲み干した後、近くにあったゴミ箱に空き缶を放り投げて捨てる。
ものの見事に空き缶はゴミ箱の中に……入ることはなく、明後日の方向へと飛んでいって、フードを被ってうずくまっていた人の頭にカコン、という音を立てて当たる。
……やっべぇ……見るからに怪しそうな人の頭に当てちまったよ……
ここらへんは治安が悪いからなぁ……怒られる前にさっさと逃げーー
「ちょっとそこのあなた。私にゴミを当てておいて逃げるつもりですか?」
逃げようとした俺に、フードを被った人が声を掛けてくる。
声から女性だということが判断できた。
……良かった……怖いおっさんとかじゃなくて。
見た目は怪しいが女性だと分かったので、逃げるのは止めて謝罪と共に空き缶を拾うためにフードを被った彼女に近づく。
「……いやー、すみません。当てるつもりはなかったんですけど、ちょうど俺が空き缶を放り投げた時に風向きが変わりましてね。俺のせいではないんです。風が悪いんです。なので、怒るなら風に怒って下さい」
清々しいまでのクズ発言をしながら謝罪と言えない謝罪をして空き缶を拾う。
「……あなた、そんな態度ばかり取っているといつか後悔することに……」
フードを被っていた怪しい女性は、小言を言いながら俺の方を見てきたかと思えば……目を大きく見開いてフリーズする。
……なんだ? 時間でも止まったのか? いや、でも風は吹いているし、雲は流れているからそうではないだろう。
じゃあ、心臓発作で死んだのか? それにしては苦しむ様子は無かったよな。
頭を捻っていると……突然、怪しい女性が俺の腕を掴んできた。
「――うぉおい! 何のつもーー」
「――ご主人様! ご主人様ではありませんか! 私です! あなたの奴隷のケイティです!」
バサッとフードを下ろして彼女は顔を見せてきた。
薄暗い道でも光り輝く金色の髪に、人間とは違う長い耳。
どうやら彼女は、今となってはかなり数を減らして、世界に二人いるかどうかと言われているエルフらしい。
……いや、ありえないな。こんな訳の分からんところにエルフがいるわけがないじゃないか。どうせ何かのイタズラだろう。
俺は必死に彼女の手を振り払おうとする。
「いきなり何を言っているんだ! ケイティ? 知らんぞそんなやつ! 誰かと間違っているんじゃないのか!? それにあんた、エルフじゃないんだろ!? 作り物の耳なんだろ!」
「そんなはずありません! あなたは紛れもなく私のご主人様であるアイゼア様です! 声も、顔も、体も! ご主人様そのものなんですから! それに、私は本物のエルフです! ほら、作り物の耳がこんなに高速で上下に動くと思いますか?」
彼女は見た目にそぐわない力で俺の腕を掴みながら、耳を高速で震わせる。
ぐっ……確かにマジモンの耳じゃないと出来なさそうな芸当だな……
って……ちょっと待て。なんでこのケイティと言ってきたエルフの女性は俺の名前を知っているんだ?
一旦彼女の手を振りほどくのを止めて、質問をする。
「なあ、なんで俺の名前を知っているんだ?」
「知っているも何も、あなたは私のご主人様だった天才魔術師アイゼア様の生まれ変わりなのですから、知っていて当然です。巷で耳にした輪廻転生の話は本当だったのですね……。まさか声、顔、体、それに名前まで一緒だったなんて……でも、記憶の方はない様子ですね……」
じーっと俺の事を透き通る目で見てくる。
……くっ……綺麗すぎて顔が熱くなりそうだ……耐えろ……耐えろ……!
しばらく見つめてきた彼女だったが、何を思ったのか突然俺に抱きついてきた。
「お、おい! 俺が生まれ変わりだとか輪廻転生とか、訳の分からんことを喋った挙げ句に抱きつくとはどういうことだ! 娼婦か!? 娼婦なのか!?」
「…………」
彼女は無言のまま、背中に回した腕に力を入れてきて……あ、やばい! せ、背骨がおれ、折れる……!
「わ、悪かった! さっきの発言は撤回するから背骨を折ろうとするのは止めてくれ!」
しかし、彼女は力をさらに強めてくる。
や、やばい……謝っても許してくれないほど激怒させてしまったというのか……!?
バタバタと腕を必死に動かしてなんとかして逃げようとあがいていると……彼女が口を開いてきた。
「……昔、同じことをご主人様にしたことがあるのですが、同じ仕草で逃げようとしていました。……記憶が無いのは残念ですが、あなたは紛れも無く私のご主人様であるアイゼア様です。やっと……やっと見つけました……三千年……あなたの帰りを待って三千年……ようやく、ようやく……愛しのご主人様に……」
力を抜いて、彼女はグスングスンと俺の胸に顔を埋めながら泣き出してしまった。
どれもこれも胡散臭い話なのに、彼女の話を聞くうちに胸の奥が何故か少しだけ熱くなってくる。
……いや、これは彼女に少しだけ同情したと言うか、彼女の迫真の演技に心が少しだけ、ほんの少しだけ動かされてしまっただけだ。
十分程抱きしてめられたままでいると、彼女が抱きついてきたまま上目遣いで俺のことを見てきて、
「……これからはずっと、ずーーーーっと一緒ですからね? たとえ記憶が無いのだとしても、生まれ変わったご主人様のお傍にいますから……」
そんなことを言ってきた。
あっ……やばい……めっちゃ可愛い……っていかんいかん! 騙されてはいけないぞ!
俺は自分の心に喝を入れながら彼女に答える。
「何度でも言ってやる。俺はあんたのことなんて知らん! そんな演技に、嘘に騙されんぞ! あんたはーー」
「ーーケイティと……そう呼んでください……」
あっ……可愛い……じゃなくて! ああもう! そんな幸せそうな顔で見られたら調子が狂うだろうが!
しかし俺は思春期の男子高校生。思わず口が滑ってしまう。
「け……ケイティ……」
「はい、ご主人様……」
……やばい……やばいやばいぞ!
なんかいい感じの雰囲気になってきて、流されそうになっているぞ……しっかり、しっかりするんだ!
そんな俺をよそに、ケイティはなおも抱きつきからの上目遣い、トドメに瞳を潤ませながら、おねだりをしてくる。
「……今日からご主人様と一緒に住んで、一緒に暮らしてもいいですか?」
…………これはもう駄目ですわ……
俺は観念し、首肯しながら『仕方ないな〜』と言う。
いやー、全く覚えがないし、天才魔術師の生まれ変わりなんてそんなことあるわけがないが、こんなに綺麗で健気な女性に言い寄られたらもう仕方ないよね。そっちの勘違いだと言っているのにここまで言い寄ってくるなら向こうが悪いよね。
俺の返事を聞いたケイティは、嬉しそうな顔をしながら俺のほっぺにキスをしてくる。
おほっ……やっば……彼女の唇超柔けぇ……
「今日はほっぺで我慢しますね!」
俺から離れて、舌をぺろっと出しながらそんな事を言ってくる。
そんな感じで、出来損ないの俺は、自分のことを天才魔術師の生まれ変わりだと言ってくるエルフのケイティと一緒に暮らすことになった。