第5話 歓迎
文字数 2,318文字
その後、首輪の件も無事解決したところで、ケイティは中断していた片付けを再開して……あっという間に俺の家の居間は見違えるほどきれいになった。
「こりゃ凄いな……こんな短時間でここまできれいになるとは……流石だというよりほかないな。というか、ここってこんなに広かったのか……」
俺は辺りをキョロキョロとする。
「もう少し綺麗にしようと思えば出来ますが、今日はもう遅いですし……それに、ご夕飯の準備もありますから」
ケイティも嬉しそうだ。
しかし、夕飯か……まともなものあったかな……
きれいになった居間をしばらく堪能した後、台所へと二人で向かい……家にある食料を確認する。
「えーっと、まずは冷蔵庫からだな」
リサイクルショップにて安くで買った魔動式冷蔵庫を開いて中身を見てみる。
「……何も無し。というか、魔力をこいつに流し込むのが面倒くさいからそもそも使ってないんだったわ」
俺はバタンと冷蔵庫を閉める。
魔動式冷蔵庫は、魔力で動く冷蔵庫で、一ヶ月に一回誰かが魔力を注入してあげないと動かなくなるのだ。
まあ、注入するって言っても大した量じゃないんだが……過去何回かその作業を忘れて中身を腐らせてから、こいつはただの置物化している。
次に、食料を保管している棚を覗いてみる。
「えーっと、カップ麺とカップ麺、それとカップ麺にカップ麺。極めつけに……カップ麺」
棚からポンポンと取り出して、床に並べる。
うん、カップ麺しかねえな。
てか、料理するのが面倒くさいから三食全てカップ麺だったわ。まあ、たまにアイツが弁当を作ってくれたりしていたけど……最近は持ってきてくれなくなったしな……
昔のことを思い出していると、ケイティが俺に話しかけてきた。
「あの……いつもこんな食生活を?」
彼女の方を振り返ると、なんとも言えない顔をしていた。
……カップ麺を見ただけでそんな顔する?
「……まあ、三年前くらいからこんな感じだな。でもカップ麺って美味しいんだぞ? 最近は色々な会社から色々な味が出ていてな。金がないからいつもはオープさんの安いものしか買えないんだけど、月に一度だけ、少し高いカップ麺を買ってきて食べるんだよ。それはそれはもう美味しくてだな。いつもよりも倍の時間をかけて味わうんだ」
少し興奮気味に話していると……ケイティが『うんうん』と頷きながら涙を流していた。
……いや……今の話でそんなことになる?
困惑していると、またまた彼女が俺に抱きついてきた。
「これからは、私が美味しい料理を作って差し上げますから……もっと、もっと早くご主人様を見つけられていたら、こんなボロボロのアパートで、こんなひもじい生活を送らなくても済んだかもしれないのに……至らなかった私をどうか許して下さい……」
ケイティがガチ泣きをしながら謝ってくる。
いや……確かに『ボロボロのアパート』で他人から見たら『ひもじい生活』を送っていたのかもしれないが……別にこれはこれで悪くないと言うか……そこまで泣かれるようなものでもないんだが……
しばらく後。落ち着いたケイティに抱きつくのを止めてもらって話を続ける。
「コホン。まあ、そういうことで今この家にはカップ麺しか無い。だから今日のところはこれで我慢してくれ」
ポン、とケイティにカップ麺を渡す。
普通なら、新しい同居人がやってきたとなれば外食したりとか、豪勢な料理を宅配してもらったり作ったりするんだが……貧乏な俺にはそんなことは出来ない。
まあ、無い袖は振れないからね、仕方ないね。
その後。時計を見ると良い時間だったので、食事をするために俺達は各々のカップ麺にお湯を注ぎ……三分待つ。
カチ……カチ……カチ……チーン!
「よし、今日の晩御飯の出来上がりだ。遠慮せずに食べてくれ」
しかし……ケイティは俺のカップ麺を見てくるだけで食べようとしない。
……?
「どうした? そのカップ麺の味が嫌いだったか?」
彼女に渡したのは、しょうゆ味だ。
東方の国から伝わってきた味らしいのだが、非常にさっぱりしていて美味しい。
初心者にも優しい味だから、仮にケイティがカップ麺を食べたことがなくてイケると思ったんだが……
お先に失礼して、麺が伸びてしまう前に自分のカップ麺を食べていると……ようやく彼女が口を開いてきた。
「ご主人様。なぜ私に豪華そうなカップ麺を?」
……ふむ。なるほど。そういうことか。
俺は麺を啜るのを止めて……彼女の質問に答える。
「特に意味はない。何も考えずにケイティはそれを美味しく食べたら良いんだよ」
「しかし……これは先程話していた月に一度のお楽しみなのでは……?」
……くっ……それはそうだが……
確かに彼女に渡したのは、先日オープさんにて買った月イチの楽しみにである豪華なカップ麺だ。大事に大事に取っておいて……今日か明日に食べようとしていたものだ。
だが……その通りなんだが……
「歓迎の意味を込めているんだよ……俺が血涙を流して渡したんだ。麺が伸びちまう前に今すぐ食え! ズズッと食え!」
早くしろという目線を送っていると……『ありがとうございます……』と何故かまた涙を流しながら……チュルチュルと食べてくれた。
「……おいしいです……ご主人様の優しさが溢れて……おいしいです……」
「お、おう……」
食べる姿がなぜか色っぽくて、ドギマギしてしまう。
……なんか……良からぬ想像をしてしまいそうだ……あまり見ないでおこう。
「こりゃ凄いな……こんな短時間でここまできれいになるとは……流石だというよりほかないな。というか、ここってこんなに広かったのか……」
俺は辺りをキョロキョロとする。
「もう少し綺麗にしようと思えば出来ますが、今日はもう遅いですし……それに、ご夕飯の準備もありますから」
ケイティも嬉しそうだ。
しかし、夕飯か……まともなものあったかな……
きれいになった居間をしばらく堪能した後、台所へと二人で向かい……家にある食料を確認する。
「えーっと、まずは冷蔵庫からだな」
リサイクルショップにて安くで買った魔動式冷蔵庫を開いて中身を見てみる。
「……何も無し。というか、魔力をこいつに流し込むのが面倒くさいからそもそも使ってないんだったわ」
俺はバタンと冷蔵庫を閉める。
魔動式冷蔵庫は、魔力で動く冷蔵庫で、一ヶ月に一回誰かが魔力を注入してあげないと動かなくなるのだ。
まあ、注入するって言っても大した量じゃないんだが……過去何回かその作業を忘れて中身を腐らせてから、こいつはただの置物化している。
次に、食料を保管している棚を覗いてみる。
「えーっと、カップ麺とカップ麺、それとカップ麺にカップ麺。極めつけに……カップ麺」
棚からポンポンと取り出して、床に並べる。
うん、カップ麺しかねえな。
てか、料理するのが面倒くさいから三食全てカップ麺だったわ。まあ、たまにアイツが弁当を作ってくれたりしていたけど……最近は持ってきてくれなくなったしな……
昔のことを思い出していると、ケイティが俺に話しかけてきた。
「あの……いつもこんな食生活を?」
彼女の方を振り返ると、なんとも言えない顔をしていた。
……カップ麺を見ただけでそんな顔する?
「……まあ、三年前くらいからこんな感じだな。でもカップ麺って美味しいんだぞ? 最近は色々な会社から色々な味が出ていてな。金がないからいつもはオープさんの安いものしか買えないんだけど、月に一度だけ、少し高いカップ麺を買ってきて食べるんだよ。それはそれはもう美味しくてだな。いつもよりも倍の時間をかけて味わうんだ」
少し興奮気味に話していると……ケイティが『うんうん』と頷きながら涙を流していた。
……いや……今の話でそんなことになる?
困惑していると、またまた彼女が俺に抱きついてきた。
「これからは、私が美味しい料理を作って差し上げますから……もっと、もっと早くご主人様を見つけられていたら、こんなボロボロのアパートで、こんなひもじい生活を送らなくても済んだかもしれないのに……至らなかった私をどうか許して下さい……」
ケイティがガチ泣きをしながら謝ってくる。
いや……確かに『ボロボロのアパート』で他人から見たら『ひもじい生活』を送っていたのかもしれないが……別にこれはこれで悪くないと言うか……そこまで泣かれるようなものでもないんだが……
しばらく後。落ち着いたケイティに抱きつくのを止めてもらって話を続ける。
「コホン。まあ、そういうことで今この家にはカップ麺しか無い。だから今日のところはこれで我慢してくれ」
ポン、とケイティにカップ麺を渡す。
普通なら、新しい同居人がやってきたとなれば外食したりとか、豪勢な料理を宅配してもらったり作ったりするんだが……貧乏な俺にはそんなことは出来ない。
まあ、無い袖は振れないからね、仕方ないね。
その後。時計を見ると良い時間だったので、食事をするために俺達は各々のカップ麺にお湯を注ぎ……三分待つ。
カチ……カチ……カチ……チーン!
「よし、今日の晩御飯の出来上がりだ。遠慮せずに食べてくれ」
しかし……ケイティは俺のカップ麺を見てくるだけで食べようとしない。
……?
「どうした? そのカップ麺の味が嫌いだったか?」
彼女に渡したのは、しょうゆ味だ。
東方の国から伝わってきた味らしいのだが、非常にさっぱりしていて美味しい。
初心者にも優しい味だから、仮にケイティがカップ麺を食べたことがなくてイケると思ったんだが……
お先に失礼して、麺が伸びてしまう前に自分のカップ麺を食べていると……ようやく彼女が口を開いてきた。
「ご主人様。なぜ私に豪華そうなカップ麺を?」
……ふむ。なるほど。そういうことか。
俺は麺を啜るのを止めて……彼女の質問に答える。
「特に意味はない。何も考えずにケイティはそれを美味しく食べたら良いんだよ」
「しかし……これは先程話していた月に一度のお楽しみなのでは……?」
……くっ……それはそうだが……
確かに彼女に渡したのは、先日オープさんにて買った月イチの楽しみにである豪華なカップ麺だ。大事に大事に取っておいて……今日か明日に食べようとしていたものだ。
だが……その通りなんだが……
「歓迎の意味を込めているんだよ……俺が血涙を流して渡したんだ。麺が伸びちまう前に今すぐ食え! ズズッと食え!」
早くしろという目線を送っていると……『ありがとうございます……』と何故かまた涙を流しながら……チュルチュルと食べてくれた。
「……おいしいです……ご主人様の優しさが溢れて……おいしいです……」
「お、おう……」
食べる姿がなぜか色っぽくて、ドギマギしてしまう。
……なんか……良からぬ想像をしてしまいそうだ……あまり見ないでおこう。