第6話
文字数 1,265文字
第三話『田中圭、三十三歳』
四年前に着たお気に入りの花柄のワンピースで出かける事にしたの。
今日は沢村さんと二人旅。しかも、出羽三山へ。お姉さんには内緒。お姉さんを心配させたくないの。
四年前、お姉さんと私は、この電車で事故に遭って、私は死んだの。
お姉さんは、私をアンドロイドとして再生した。おかげで私は、お父さんとお母さんを見送る事が出来た。
でもね、お姉さん、分かって。いつか、私も逝かないと。私の人生を完結させないと。
「どうしたんだい。深刻な顔して」
「あっ。ゴメンなさい。沢村さんを巻き込んじゃって」
「えっ。何の事だい。俺は、ただ、ケイちゃんと一緒に居られて楽しいんだよ。本当だよ。もうすぐ着くよ。月山だったよね。ケイちゃんが行きたがっていた所は」
「うん」
月山へ行く途中で私は絵葉書を買って、姉へのメッセージを書き添えた。
『やっと、出羽三山に来れました。出羽三山の三つの山って、現在、未来、過去の世界をあらわしているんですって。死と再生の象徴らしいの。私にピッタリの場所だったのね。お姉さん、ありがとうね。お父さん、お母さんを見送る事が出来て、私は本当に幸せです。小さい時から、お姉さんは私の太陽のような存在よ。私は月かな。お姉さん、悲しまないでね。私は目に見えない世界に逝くだけよ。いつも傍にいて観ているから』
月山の山頂に着いた私は月の明かりに照らされて目を閉じた。この月の光りが太陽の光りを反射しているなんて信じられない。まるで、私の存在のような月の明かり。
振り向くと、沢村さんが優しい眼で私を見守っていた。
でも、逝かなくっちゃ。私の人生を完結させなくっちゃ。私の魂が本当に生き続ける為に。
「ねぇ、私も、そうよ」
「えっ、何が」
「以前、言ってたでしょう。死んだら何も残さず自然に還りたいって」
「あっ。ゴメン」
「ううん。ただね。私、親より先に死ねなかったの。あっ正確には、もう私、死んでいるのにね。フッフッ。今でもね」
「御両親は今、どうしているの」
「実は先月に母が亡くなって。父は三年前に。だから、私も。もう。もう、この世界に存在する意味がないの」
「そんな事無いよ。俺たち、こうして出逢う事が出来たじゃないか」
「ありがとう。でも私、死んでいるのよ。もし、私がこの世界から消えても隠れているだけよ。いつも傍 にいるわ」
「何を言っているんだよ。消えるだなんて」
「知っているかしら。私のここのスイッチを切ると、私ね、動かなくなるの」
「えっ。じゃまた、俺がスイッチを元に戻すよ」
「だめよ。私ね、もう記憶データも思考データーも身体機能をアップデートする事も出来ない様にと解約してきたし、私のDNA遺伝子も破棄して来たの。だから、もう、さよならよ」
私は沢村さんに笑顔で手を振り、自分のスイッチを切った。
「さようなら」
「イッヤァー。ダメヨ。何でよ。何でなのよ。バッカァ」
「大丈夫ですか。沢村ケイコさん。あなたは沢村ケイコですよ。ここが何処か分りますか」
「ハッハッ。あたしっ。行かなくっちゃ。木村君に大切な事を伝えなくっちゃ」
四年前に着たお気に入りの花柄のワンピースで出かける事にしたの。
今日は沢村さんと二人旅。しかも、出羽三山へ。お姉さんには内緒。お姉さんを心配させたくないの。
四年前、お姉さんと私は、この電車で事故に遭って、私は死んだの。
お姉さんは、私をアンドロイドとして再生した。おかげで私は、お父さんとお母さんを見送る事が出来た。
でもね、お姉さん、分かって。いつか、私も逝かないと。私の人生を完結させないと。
「どうしたんだい。深刻な顔して」
「あっ。ゴメンなさい。沢村さんを巻き込んじゃって」
「えっ。何の事だい。俺は、ただ、ケイちゃんと一緒に居られて楽しいんだよ。本当だよ。もうすぐ着くよ。月山だったよね。ケイちゃんが行きたがっていた所は」
「うん」
月山へ行く途中で私は絵葉書を買って、姉へのメッセージを書き添えた。
『やっと、出羽三山に来れました。出羽三山の三つの山って、現在、未来、過去の世界をあらわしているんですって。死と再生の象徴らしいの。私にピッタリの場所だったのね。お姉さん、ありがとうね。お父さん、お母さんを見送る事が出来て、私は本当に幸せです。小さい時から、お姉さんは私の太陽のような存在よ。私は月かな。お姉さん、悲しまないでね。私は目に見えない世界に逝くだけよ。いつも傍にいて観ているから』
月山の山頂に着いた私は月の明かりに照らされて目を閉じた。この月の光りが太陽の光りを反射しているなんて信じられない。まるで、私の存在のような月の明かり。
振り向くと、沢村さんが優しい眼で私を見守っていた。
でも、逝かなくっちゃ。私の人生を完結させなくっちゃ。私の魂が本当に生き続ける為に。
「ねぇ、私も、そうよ」
「えっ、何が」
「以前、言ってたでしょう。死んだら何も残さず自然に還りたいって」
「あっ。ゴメン」
「ううん。ただね。私、親より先に死ねなかったの。あっ正確には、もう私、死んでいるのにね。フッフッ。今でもね」
「御両親は今、どうしているの」
「実は先月に母が亡くなって。父は三年前に。だから、私も。もう。もう、この世界に存在する意味がないの」
「そんな事無いよ。俺たち、こうして出逢う事が出来たじゃないか」
「ありがとう。でも私、死んでいるのよ。もし、私がこの世界から消えても隠れているだけよ。いつも
「何を言っているんだよ。消えるだなんて」
「知っているかしら。私のここのスイッチを切ると、私ね、動かなくなるの」
「えっ。じゃまた、俺がスイッチを元に戻すよ」
「だめよ。私ね、もう記憶データも思考データーも身体機能をアップデートする事も出来ない様にと解約してきたし、私のDNA遺伝子も破棄して来たの。だから、もう、さよならよ」
私は沢村さんに笑顔で手を振り、自分のスイッチを切った。
「さようなら」
「イッヤァー。ダメヨ。何でよ。何でなのよ。バッカァ」
「大丈夫ですか。沢村ケイコさん。あなたは沢村ケイコですよ。ここが何処か分りますか」
「ハッハッ。あたしっ。行かなくっちゃ。木村君に大切な事を伝えなくっちゃ」