第6話

文字数 605文字

 こんな日は待たない方がいい。食べて、テレビ見て、友達にLINEして、玄関には鍵を掛けて寝てしまおう。「ごめんね」の一言もない奴のことなんか、忘れて寝てしまえば新しい明日がやってくる。
 私を大事にしない奴なんか、振ってしまえ! 頭からシャワーを浴びていると、(いさぎよ)い言葉が降ってくる。

 美空はふわもこのパジャマ兼用の部屋着に着替えた。濡れた髪を拭きながら冷蔵庫をのぞく。裸足の足が早くも冷えてくる。さきほどよりも、部屋の温度が下がったのかもしれなかった。

 「もしかして……」

 美空はレースのカーテンをシャッと音を立てて一気に開いた。

 「雪だ……」

 窓からの冷気にブルッと体を震わせた。今度こそシャッターを閉めなければと、思い切って窓を開ける。
  
 ピン、ポン……。

 玄関のチャイムの音だ。美空は急いでシャッターを上から下まで引き下ろした。

 (誰だろう?)

 壁に掛かっている時計に目を走らせると八時だった。友達と飲みに行ったことを考えると、遥柾(はるまさ)にしては早すぎる。

 (宅配便かなあ。何か買ったかな……?)

 美空は首にかけたタオルでまだ濡れている髪をギュっと絞りながら、玄関のモニターのスイッチを入れる。

 見慣れた猫背の後ろ姿。ポケットに両手を突っ込んでいるところも、いつもと同じだ。飛び跳ねるように玄関に走り鍵を開ける。

 「なんで? 来てくれたの?」

 さっきまでの暗い気持ちなど一瞬で吹き飛んだ。

 「来るって言ったろ」
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