第5話

文字数 485文字

 (遥柾はいつだって、私が合わせてくれると思っている。私がいて欲しいときには、いてくれないのに、振り返ればいつだって私がいるのが当たり前で)

 それなのに別れる、そう思っただけで、凍った空気を吸い込んだように胸の奥が悲鳴をあげた。

 (一緒にいる寂しさと別れる悲しさはどっちが辛いんだろう?)

 別れる悲しさはきっと一時(いっとき)だ。それなのに別れようと考えただけで、どうしてこんなにも胸が痛いんだろう。美空は自分の気持ちに(ふた)をするように、白いレースのカーテンをぴったりと閉めた。

 「明日考えよう」

 声に出して言った。どちらか迷うなら、自然に答えが出るまで今のままでいいような気がした。
 気分を変えよう、とテーブルにならべた豪華なお総菜を見た。美味しそうだ。しかし豪勢に食べるにしても多すぎる。つい二人分買ってしまったからだ。

 「今日はもう戻ってこないのかな……」

 料理の半分は冷蔵庫にしまったが、チーズスフレケーキとホワイトチョコムースは二個とも入れた。消費期限は明日の朝までだ。一緒に食べられるかな……。閉じ込めたはずの不安が、また忍びよってきて、美空はお風呂に逃げ込んだ。

    
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