第3話 抜け殻斗飛への百出哲則の助言②
文字数 742文字
百出は思いついたような表情を浮かべて話を加えてくる。
「えっ、何ですかそれ」
「自分の意見をしっかり主張できる自己主張力と他人の立場や状況に応じて考えることができる共感力はもっているけど、場の空気に応じてボケたりツッコミを入れて盛り上げるとか、明るい雰囲気づくりをしようとはしない、同調力に欠けているタイプだ。ただ、多数派には流されず自分の正義感と価値観にもとづいて立場を決めるから、たとえ少数派であっても自分が正しいと思う者の味方をすることもある。たとえそれが自分ひとりであってもね。教師にとっては味方にも敵にもなり得るタイプだな」
「うぅん、華恵さんの顔が浮かびますね」
斗飛は苦笑いを浮かべた。
「この栄光ある孤立タイプは、実は二・六・二のどの層にもなり得る存在なんだ。もちろんポシティブな二割に引き込めれば心強いことは間違いない。正しいと思うことの方向性が教師と似れば、周りがどうあれ強く押し進めてくれるからね。ただし、今日までポジティブ二割にいたのに、翌日はネガティブ二割に属するってこともあるから要注意だ。自分の価値観に合わないと判断すれば、簡単に手のヒラを返してくる」
「そうなんですね」
「だから、教師は子どもたち一人ひとりのタイプをしっかり把握して、サイレントマジョリティや栄光ある孤立タイプの子をポシティブ側に引きつけるために、ノリのよい運営か、しっかりと語って聞かせる運営か、教師が引っ張る運営か、はたまた、子ども主体の活動中心の運営がいいのかを見極めながら進めていくことが大事なんだ。だからこそ、教師は毎年学級経営に変化を求められるんだ」
「わかりました。そういうところをまずは勉強します」
斗飛は明るい声で答えた。