最終話 「彼女」

文字数 1,958文字

レアルは勢いよく放送室の扉を閉め背中で押さえつける。

よっちは必死に放送室の扉を叩く──。

おい、レアル!出てこい!

レアルは必死で扉を背中で抑える──。

……

話がしたい!ここを開けてくれ!

俺たち親友だろ!!!

レアルは背中で扉を抑えるのをやめ、勢いよく放送室の奥に走ろうとする。

よっちは扉を開けレアルの腕を引っ張り放送室の放送機材がある机に体を押し付ける。

その勢いで放送機材の校内放送の音量調整バーが少しあがる──。

レアル!待てって…

なんだよ!

どうして学校こないんだよ!

はぁ?よっちには関係ないでしょ…

なるっちから聞いたぞ!

お前が中学の時から学校に来なくなった事を…

もしかして、いじめられて…

レアルはよっちの話の途中で割り込んで話す。

大きな声で叫んで下を向く──。

違う!!!

いじめられていたのは、俺の兄貴なんだ…

── 学校・教室 ──

いっちーはメイク直しをしている。

隣にいるりっちゃんはスマホをいじっている。

校内放送に気がつき目を合わせ、笑いながら話す2人。

えっ…なにこれ?

なんか始まるのかな?

── 学校・廊下(トイレ前) ──

なるはハンカチで手を拭きながら歩いている。

校内放送を聞いてゆっくりと立ち止まり、そっと上を向く──。

レアル…?

── 学校・放送室 ──

レアルは目をこすり鼻をすすりながら泣くのを我慢している。

悩んでた兄貴に気が付いてやれなかった…

俺が相談に乗っていれば死なないで済んだのに…

お前の兄貴って…

そう…高校の甲子園で最後、ツーアウト満塁であと一点取れば優勝できたんだけど

兄貴が外したせいで優勝できなくなった…

その責任の押し付けで俺の兄貴がいじめにあったんだ…

レアルはよっちにの両腕を掴み泣きながら叫ぶ──。

兄を失ったこの気持ち、お前にはわからないだろ!

もう戻ってこないんだぞ!!!

レアルはそっとしゃがみ下を向いたままひざまずく。

そして独り言のように話し始める。

もう…戻ってこないんだぞ…

いつまで泣いてんだ…

えっ?

いつまで泣いてんだって言ってんだよ!

タイチはレアルの目線までしゃがみこむ。

お前のその悔しい気持ちより、

兄貴の方がよっぽど悔しい思いしているぜ…

試合に負け、かっこ悪い姿を…弟のお前に見せれなかったんだよ!

タイチはレアルの肩をそっと触れる。

かっこいい兄貴じゃんか!

ほんと、俺の兄貴なんて家でずっとゲームしかしてない帰宅部だぞ!

お前ら…

なるが心配してたぞ…行ってやれ!

レアルは左腕で目をこすり安心した表情を見せ小走りで放送室を去って行く。

おっ…おう!

よっちとタイチはお互いを見ながら頬がゆるむ。

レアルは校舎中を走り回りなるを探している──。

なるが勢いよく放送室に入る。

少し息が荒れている。

レアルは?

ここにレアルがいたんじゃない?

もう、出て行ったよ…

なるは振り返って放送室を走って出る。

よっちとタイチは一緒に放送室を出てなるを見送る様に見る。

俺たちの出る幕はないってか…

なんか…脇役みたいだな、俺たち…

すると、いっちーとりっちゃんが階段脇からよっちとタイチを見つけ、小走りで向かう──。

あぁ…ここにいた!

いっちーはよっちの左耳をつねる。

あんたたち!校内中丸聞こえだっつーの!

いっちーは勢いよく耳をはたく。

イテッ…

私にボールを当てた仕返し!

ねぇ、あんたたち仲良すぎない?

確かに…

よっちといっちーは口を揃えて言う──。

そんな事ないって!!!

そんな事ないって!

よっちといっちーはお互い、そっと目を見つめる。

よっちだけ目を逸らす。

レアルはパソコン室前で下を向いて息切れをしている。

なるは階段を駆け上がりレアルを見つける。

レアル…

なるは小走りで走り大声でレアルの名前を叫ぶ──。

レアル!

レアルはそっと顔を上げる。

なる…

なるはレアルのそばまで来る。

安心した表情で少し頬がゆるむ。

元気にしてた…?

うん…

なるはゆっくりと歩き出しレアルと抱きつき、上を向き目を潤わせ涙を流し始める。

レアルは戸惑いながらもそっとなるの腰に手をあてる──。

もう…ほんと、心配したんだよ!

ゴメン…

レアルとなるは同じタイミングで言葉を交わす──。

これからはさ…

これからはさ…

ぎこちない空気が流れるもレアルが勇気を振り絞り言い出した──。
これからはさ…

レアルとなるはそっと離れる。

幼馴染としてじゃなく、彼女として…俺と付き合ってください!

なるはレアルの頬にそっとキスをする──。

もちろん!よろしくね!!!

レアルは勢いよく自分の方に抱き寄せる──。



おわり

最後までご視聴ありがとうございました。

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