第1話 嫉妬はシットコム

文字数 653文字

 今から17年前、生後3ヵ月の仔猫が神戸からやってきた。
 寝顔がモナリザの微笑みをほうふつさせる、瞳の大きな雌猫だった。兄弟はキジトラとサビ猫で、前者はうさしっぽ、後者はピンとまっすぐのびたしっぽを持っていた。
 両親の遺伝子をこんなにも規則正しく受け継ぐものなのかと、最初に驚いたことだ。
 まさか17年間もいっしょにいてくれるとは思わなかった。
 いや、心の奥底では、最低20年間はいっしょにいられると信じていた。

 モナの性格は、年齢に加えて我が家に保護猫の数が増えていくたびに変化していったように思う。まずなんといっても、モナを語る上で「嫉妬」のエピソードは外せない。
 モナが仔猫だった頃、私は一人暮らしをしていた。
 ワンルームだったが、友人がときどき泊まりに来てくれた。
 しかし、毎晩私の布団の中に入って眠るのが日課であるモナにとって私の友人は天敵以外のなにものでもない。
 友人が帰った翌日、「さぁ、部屋の掃除でもするかぁ!」というタイミングで必ず布団の上か座椅子の上に粗相を見つけた。
 ちょっとの量ならまだしも、大量にされるので洗濯ではどうにもならない。すべて買い替えるしかなかった。正直、痛い出費ではあったが、それがモナの怒りのバロメーターだと思うと愛おしくも思えた。そんなに自分を好いてくれているのかと。
 このモナの嫉妬による粗相は2、3年ほど続いた。
 
 しかしその間、翌日になってもモナの嫉妬、怒りによる粗相攻撃が発動しないゲストがただひとり存在した。それは…              【続く】
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