第5話
文字数 940文字
アシンメトリー
おまけ②【門番の喧嘩】
「閻魔様」
「なんだー?」
「浮幻と雲幻が喧嘩をしているようですが、どうします?」
「・・・放っておく」
「それはダメかと」
「じゃ行くしかねぇじゃねえか。なんで喧嘩なんかするんだよ」
仕事が溜まってるのに、と文句を言いながら、閻魔は二人のもとに行った。
二つの門はそれほど離れておらず、閻魔はぴりぴりしているその空気を感じ取る。
「おい、落ち着け」
口を出した瞬間、浮幻からは睨まれ、雲幻からも笑顔のまま睨まれた。
「何があったか話せ」
話しを聞くと、どうやら、浮幻のもとに雲幻がきて、ちょっかいを出したようだ。
なんでそんなに無愛想なのかとか、瞬きの回数が少ないだとか、名前が変だとか。
最初は無視をしていた浮幻なのだが、さすがに鬱陶しくなったらしく、雲幻の足を踏んだようだ。
「・・・雲幻が悪い」
「えー!なんでですかー!俺は浮幻と仲良くなろうとしただけなのにー!」
「仲良くなろうと思う奴の言うことじゃねぇよ」
ふああ、と欠伸をすると、閻魔は首を左右に動かして、二人に背を向けた。
「閻魔様って、そういうとこありますよね」
ふと、浮幻が言った。
ぴく、と動きを止めた閻魔は、ゆっくりと顔を動かす。
「何がだ?」
「いえ、別に」
「言えよ。俺はこういう性格だ。問題あるか」
「いえ、別に」
「あのなあ、そうやって言いかけたことを言わないのは良くないぞ」
「言いかけていません。言いましたから」
「うっわ何こいつ」
「それより、仕事はよろしいのですか?」
「そーですよ。俺達のこと気にかけてる暇あるんですか?」
「ムカつくな、お前等」
「閻魔様はお仕事で忙しいでしょうから、早く戻ってください」
「棒読みすんじゃねえよ」
「俺達の喧嘩に口挟まないでもらえますか」
「ほんとほんと」
「・・・!!!!!」
閻魔の苛々は頂点に達そうとしたが、ぐっと堪えた。
「・・・ああ、もういいや」
諦めたというよりは、疲れてしまったようだ。
閻魔はそのまままた部屋へと戻って行く。
そんな閻魔の後姿を見て、浮幻と雲幻は互いに顔を見合わせ、片方はため息を吐き、片方は笑った。
「閻魔様、どうかしましたか」
「小魔」
「はい」
「くじけそう」
「知りません」