感覚を受け取るモノ
文字数 869文字
五感で言葉を受け取る・・・・・・
占い師はベースとなる占術の知識と技術のみでは完全な占いを行えていることにはならない。
・・・・・・カラダで心を受け取れ。
師匠に最初に教えられたことだった。
心で感じ取る週間を持つことで、より正しい言葉は与えられる。
それはいわば、祈りにも似ているところがある。
心の中にある自分を縛る主観と先入観を取り除き、本来の心に洗い流すこと。
私は師匠の言葉を思い出し、スッと呼吸を整いた。
16時を少し回ったところだろうか・・・・・・
今朝ほど、クラスメイトの宮前沙雪から占いの依頼が入った。
約束の時間よりも少し遅れると彼女から連絡があったのだが、もう30分は何も連絡はない。
私は今、文芸部が借りている部室の前にいた。沙雪待ちである。
・・・・・・どうしたんだろ?
約束の時間は過ぎている。
沙雪は約束をやぶる子でないことは知っている。
だからこそ、私の気持ちは落ち着かなかった。
「あれは?」
左の廊下のほうだった。
足音が聞こえた。
規則性のない二つの音だ。
「せ、先輩! 待ってください」
聞き覚えのある声。
・・・・・・この声は。
・・・沙雪?
私が声を出そうとした瞬間に、長身の生徒が私のすぐ横を通り過ぎていく。
・・・・・・急いでる!
・・・・・・・・・しなければならないことが・・・
・・・もうオレにはこれしかないんだ・・・
聖誕高校の生徒だ。私の知らない人。
私の中に流れ込んでくる嫌な気配が、言葉を伝えてきた。
占い師には占い師だけが聞こえる声や音がある。
肌で感じ取る空気の厚みや温度によって感情を受け取り、身体の中へと流れ込む空気が私に映像と声を伝えてきた。
「今のは、なに?」
過ぎ去る生徒の後ろ姿は、やがて階段の向こう側へと姿を決していった。
すぐ後ろに人の気配を感じて振り返ると、不安そうな表情で階段の向こう側を見つめる沙雪がいた。
「沙雪・・・・・・?」
「あは、は、ごめんね。マリア。遅くなっちゃって」
力のない笑顔で沙雪は笑った。
占い師はベースとなる占術の知識と技術のみでは完全な占いを行えていることにはならない。
・・・・・・カラダで心を受け取れ。
師匠に最初に教えられたことだった。
心で感じ取る週間を持つことで、より正しい言葉は与えられる。
それはいわば、祈りにも似ているところがある。
心の中にある自分を縛る主観と先入観を取り除き、本来の心に洗い流すこと。
私は師匠の言葉を思い出し、スッと呼吸を整いた。
16時を少し回ったところだろうか・・・・・・
今朝ほど、クラスメイトの宮前沙雪から占いの依頼が入った。
約束の時間よりも少し遅れると彼女から連絡があったのだが、もう30分は何も連絡はない。
私は今、文芸部が借りている部室の前にいた。沙雪待ちである。
・・・・・・どうしたんだろ?
約束の時間は過ぎている。
沙雪は約束をやぶる子でないことは知っている。
だからこそ、私の気持ちは落ち着かなかった。
「あれは?」
左の廊下のほうだった。
足音が聞こえた。
規則性のない二つの音だ。
「せ、先輩! 待ってください」
聞き覚えのある声。
・・・・・・この声は。
・・・沙雪?
私が声を出そうとした瞬間に、長身の生徒が私のすぐ横を通り過ぎていく。
・・・・・・急いでる!
・・・・・・・・・しなければならないことが・・・
・・・もうオレにはこれしかないんだ・・・
聖誕高校の生徒だ。私の知らない人。
私の中に流れ込んでくる嫌な気配が、言葉を伝えてきた。
占い師には占い師だけが聞こえる声や音がある。
肌で感じ取る空気の厚みや温度によって感情を受け取り、身体の中へと流れ込む空気が私に映像と声を伝えてきた。
「今のは、なに?」
過ぎ去る生徒の後ろ姿は、やがて階段の向こう側へと姿を決していった。
すぐ後ろに人の気配を感じて振り返ると、不安そうな表情で階段の向こう側を見つめる沙雪がいた。
「沙雪・・・・・・?」
「あは、は、ごめんね。マリア。遅くなっちゃって」
力のない笑顔で沙雪は笑った。