心を探るモノ
文字数 1,482文字
「難しい選択ですね。
今はどちらも動く時ではありません。
カードが示しています。
時が巡るのを待ちましょう」
そういったのは、私の前にいる1人の男性だった。
私は彼の後ろにひかえ、彼らの話す内容をノートに記録している。
「あの、・・・・・・・・・わたし、これからどうしたら良いんでしょうか・・・・・・」
机をはさんで彼の向かい側に座る一人の女性は、小さな声で言葉をもらした。
不安と悲しみと、そして怒りとで彼女の心は乱れている様子だった。
彼は机に並べられた一枚のカードを拾い上げると、彼女の前に広げた。
「ラヴァーズ。恋人たち。
示されたカードは、どちらも選ぶことができない状況を意味しています。
これまでの関係性から、新しい関係へと変えていく必要はあったとしても、それらを解決する方法はありません。
彼にとっても同じです。
言葉が適切かはわかりませんが、彼は貴方ともう一人の方とを天秤にかけているのでしょう」
タロットカード
この名を聞いたことがある人も多いはず。
手のひらに収まるほどの大きさで、トランプのように裏面と表面がある。
表面には78枚の異なった図柄が描かれていて、象徴される物語に合わせて、今の状況から未来を占う占術の一つである。
私の前にいる彼は占い師である。
黒いヒラヒラのロングカーディガンに赤いシャツ、ひょろりとした体型でどことなく掴みどころがない。
性格も明るいのか暗いのかさえも不明であるが、この黒い占い師が私の師匠となる男だ。
「それは知ってます。
でも、このまま何も話をしないで別れるのはしたくない。
彼はわたしのことをどう思っているんですか?」
「女司祭の逆位置。
彼の浮気相手は貴方のことを良く知る人物ではないですか?」
並べられたカードを一枚選ぶと占い師はそういった。
「は、はい・・・実は」
その先を言おうとした彼女に、彼はそっと人差し指を立ててそれを制して、
「彼に偽りの言葉を告げているものがいます。
様々な話や情報によって、彼は本心を失っている状態にあるでしょう。
真剣に未来を見ることができていません」
「・・・・・・・・・」
占い師の言葉に、女性は何も言わずにうつむいたままため息を吐いた。
「いつもそうなんです。
自分を認めてくる人についていく人・・・・・・」
「縛らているのは貴方も同じです。
それを分かっていて、今もこうして彼に着いてきているわけですから」
「彼次第ってこと?」
「いいえ。貴方次第です」
「わたしは彼を許せない」
「本当に?」
「え? いえ・・・・・・」
「本当は、彼のことを許そうとしている。
でも、心の中では納得出来ない。
今回が初めてではない何度目かの浮気を許していいのか迷っている。
本心はそうでないですか?」
「・・・・・・・・・」
占い師の言葉に、彼女は大きく泣き崩れた。
知っていた。何もかもを。
占い師は初めから、彼女の心が悲鳴を上げていてここにきていることに気がついていた。
だけど、自分の気持ちを自分の中で解消しない限り、その先には進めない。
運命とは、一つ一つの自分の中にある選択の実行で作られている。
と、師匠は言う。
誰かに。
自身が出した答えが正しいものなのかを教えて欲しい。
人生に正解はないけど、自分の心で思っている答えには正解がある。
だから、その答えを確認したい。
そういった思うから占いにくるものも多いのだ。
今はどちらも動く時ではありません。
カードが示しています。
時が巡るのを待ちましょう」
そういったのは、私の前にいる1人の男性だった。
私は彼の後ろにひかえ、彼らの話す内容をノートに記録している。
「あの、・・・・・・・・・わたし、これからどうしたら良いんでしょうか・・・・・・」
机をはさんで彼の向かい側に座る一人の女性は、小さな声で言葉をもらした。
不安と悲しみと、そして怒りとで彼女の心は乱れている様子だった。
彼は机に並べられた一枚のカードを拾い上げると、彼女の前に広げた。
「ラヴァーズ。恋人たち。
示されたカードは、どちらも選ぶことができない状況を意味しています。
これまでの関係性から、新しい関係へと変えていく必要はあったとしても、それらを解決する方法はありません。
彼にとっても同じです。
言葉が適切かはわかりませんが、彼は貴方ともう一人の方とを天秤にかけているのでしょう」
タロットカード
この名を聞いたことがある人も多いはず。
手のひらに収まるほどの大きさで、トランプのように裏面と表面がある。
表面には78枚の異なった図柄が描かれていて、象徴される物語に合わせて、今の状況から未来を占う占術の一つである。
私の前にいる彼は占い師である。
黒いヒラヒラのロングカーディガンに赤いシャツ、ひょろりとした体型でどことなく掴みどころがない。
性格も明るいのか暗いのかさえも不明であるが、この黒い占い師が私の師匠となる男だ。
「それは知ってます。
でも、このまま何も話をしないで別れるのはしたくない。
彼はわたしのことをどう思っているんですか?」
「女司祭の逆位置。
彼の浮気相手は貴方のことを良く知る人物ではないですか?」
並べられたカードを一枚選ぶと占い師はそういった。
「は、はい・・・実は」
その先を言おうとした彼女に、彼はそっと人差し指を立ててそれを制して、
「彼に偽りの言葉を告げているものがいます。
様々な話や情報によって、彼は本心を失っている状態にあるでしょう。
真剣に未来を見ることができていません」
「・・・・・・・・・」
占い師の言葉に、女性は何も言わずにうつむいたままため息を吐いた。
「いつもそうなんです。
自分を認めてくる人についていく人・・・・・・」
「縛らているのは貴方も同じです。
それを分かっていて、今もこうして彼に着いてきているわけですから」
「彼次第ってこと?」
「いいえ。貴方次第です」
「わたしは彼を許せない」
「本当に?」
「え? いえ・・・・・・」
「本当は、彼のことを許そうとしている。
でも、心の中では納得出来ない。
今回が初めてではない何度目かの浮気を許していいのか迷っている。
本心はそうでないですか?」
「・・・・・・・・・」
占い師の言葉に、彼女は大きく泣き崩れた。
知っていた。何もかもを。
占い師は初めから、彼女の心が悲鳴を上げていてここにきていることに気がついていた。
だけど、自分の気持ちを自分の中で解消しない限り、その先には進めない。
運命とは、一つ一つの自分の中にある選択の実行で作られている。
と、師匠は言う。
誰かに。
自身が出した答えが正しいものなのかを教えて欲しい。
人生に正解はないけど、自分の心で思っている答えには正解がある。
だから、その答えを確認したい。
そういった思うから占いにくるものも多いのだ。