報酬を受け取るモノ

文字数 1,129文字

私はまだ・・・・・・

心の奥にある神様の居場所からの声を受け取ったことがない。

師匠はいう。

本当に必要なときがくると、言葉は自然と与えられるものだと・・・・・・

私が師のもとで占術を学び始めたのは、15歳の夏になる。

今年で3年目だ。
占い師になろうと思ったきっかけ?
それはまた次の機会に話そう。

私は聖誕高校に通う生徒だ。今年で2年目になる。
師匠と出逢い、私は神について学ぶことを決めた。
宗教家になるつもりはない。
私はただ・・・・・・自分の中にある神と話がしたいだけ・・・・・・

「おはよう。マリア」
いつものように家を出た私は、これまたいつものように聖誕高校行きのバスを待っていた。
声をかけてきたのは、同じ学校のクラスメイトである一条沙雪だった。
「おはよ。沙雪」
眠い目をこすりながら、私はそう返した。
昨日は師匠の元で占いの講義が夜遅くまで続いた。
・・・・・・眠りについたのは深夜の2時過ぎである。

眠いのは当然だ。

「ちょっと、どうしたのよ。
また夜遅くまでオカルトちっくなことやってるわけ?」
「・・・・・・まあ、いろいろとね」

・・・オカルトちっくなことって・・・・・・

占いというものは、決して怪しいものではない。
神秘学としての学問の一つである。
イギリスでは200年くらい前までは、大学の専科に神秘学やヘルメス学として占いの原理となる知識が学べたといわれている。

・・・・・・ここで、沙雪にそのことを伝えても伝わらないだろう。きっと。

適当に相づちを返しながらいると、
「マリア・・・・・・ちょっと良いかな」
「え?」
「今日の放課後は予定ある?」
周囲の人に聞こえないほどの小さな声で沙雪が私にそう聞いてきた。

・・・・・・今日は、師匠のところに行く予定もないし、空いてるといえば空いてるか。

「特に用事はないけど・・・」
「ホントに!」
「あ、え? うん」
急に声を上げた沙雪のテンションに、私の方がおどろいた。

「ちょっと、ね。占いで見てほしいことがあって」
「それって、依頼っこと?」
「もちろん。報酬はいつものお店のスイーツセットでどう?」
「引き受けた」

報酬は占い師と相談者の間で交わされた契約のようなものになる。
だから無闇に無料鑑定などを行わない方が良いと・・・・・・師匠は言う。

相談をする側とされる側にとって、それぞれの時間を差し出すのだから、それに見合った過不足のない交換が必要となるからだ。

貰いすぎてもダメだし、貰わなすぎてもいけない。

「じゃ、放課後ね。文芸部の教室借りておくから」
私と沙雪との会話を見計らってか、少し遅れてきたバスが到着した。
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登場人物紹介

安倍マリア

聖誕高校に通う2年生

方舟ノアのもとに弟子入りして占い修行に励む

得意占術

タロットカード

方舟ノア

明日風町で占いサロンを経営している

年齢不詳の占い師

本当は弟子はとらない予定だったが、ひょんなことからマリアの弟子入りを許可した

国内外から支持を集める占い師

かつて世界を旅しながら、占いを学び歩いた経験から現在に至る

得意占術

タロットカード

トートタロット

易学

占星術

宮前沙雪

聖誕高校に通う2年生でマリアのクラスメイト。美術部に所属している元気で明るい天然系女子。

マリアが占い師見習いであることを知っている沙雪は、不安なことや悩みが生まれる度にマリアに相談しにくる

マリアにとって大切なクライアント(依頼者)となる

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