見習うモノ
文字数 2,106文字
私の名前は安倍マリア。
聖誕高校に通う高校生であり、占い師見習い兼助手をしている。
私の師は、明日風町で占いを生業とした相談業務を行っている占術師である。
タロットカードを初めとした様々な占術の知識を持ち、国内外からも鑑定の依頼がやってくる人気の占い師だ。
とはいっても、完全な口コミ制で鑑定を行っているため、鑑定依頼が殺到することはない。
今日日、テレビや雑誌などで持ちきりの有名占い師とは違い、悩みや不安を解消する陰の番人のような占い師である。
「お疲れ様です」
私がそういうと、占い師に笑顔が戻った。
占いが始まると師匠の表情や気配が変わる。
それは師匠いわく、占うを行うときは常に心を閉じて、自己の中にある先入観や主観を取り除かなければならないからだと言う。
「いえいえ。
先ほどの方は、ここにくる前から答えは分かっていましたからね。
あとは彼女がどのように答えを出していくのかを見守るだけです」
運命は生き物である。
そう師匠は言う。
常に日常の中での何気ない行動や選択で、未来に作られるであろう時間の流れは変わっていく。
だからこそ慎重に決断はして行かなければならないし、占い師の仕事も軽い気持ちで行ってはならない。
「ノア先生は何も望まないんですか?」
方舟ノア。
それが私の師である男の名である。
「彼女に対して? ですか」
ノアは私の問にしばらく何も言わなかった。
私は思う。
もしも、未来が見えているなら、それは伝えなければならないものだと。
でも、占い師はそれではいけない。
運命は一つ一つの決断の積み重ねによって作られている。
過去がなければ何も作られないし、想像する未来もやってこない。
占い道具を一通り片付け終えると、ノアは私の問に答えてくれた。
「期待はありますよ。
今が彼女にとって重要なときです。
これからの人生において、必要な切り替えポイントになっていますから」
・・・・・・そうなって、ほしい。
「乗り越えなくてはならない壁を、助言として言葉を伝えるのが占い師の役割です。
一緒に人生を歩んでいけるパートナーではありません。
生涯ずっと彼女と寄り添うことはできませんからね。
あくまでも、占い師は選択肢としての現在と未来を見せるが役割です」
私の中にある心のを察したのか、ノアは私にそういった。
依頼者に心を引き込まれないようにする・・・・・・
私が最初に教わったことだ。
まだ、私にはそれができていない。
今回、先生のもとにやってきた依頼人は二十代半ばの女性。もう五年くらい通ってきている常連さんである。
どうやら、その時からずっと同じ悩みを抱えているようだった。
その悩みというのが他でもない、浮気グセの治らなき彼氏さんのことだ。
高校生のときに知り合ってから、付き合い始めたのがその二年後で、その間にも何度も浮気、喧嘩、別れる別れない、離れられない、一緒にいたいけど、喧嘩になるから一緒にいたくないの繰り返しをずっとしていた。
そんな中、彼女の中では自分の気持ちがわからなくなって言ったという。
でも、きっと・・・・・・
「彼女は彼のことを今でもずっと愛しています。多分。
別れることが、彼女にとって本当に幸せなんでしょうか」
「それを決めるのは彼女自身です」
「じゃあ、占い師の役割はなんですか?」
「彼女の中にある神様に問う機会を作ることです」
「・・・神様?」
「言い方や言葉は違っていても良いのです。
心のずっと遠いところにある本心を受け止めなければなりません。
今、自分が決断しようとしていることが、正しい選択であるのか、と・・・・・・」
・・・・・・正しい、選択・・・・・・
ノアは納得のいかない表情の私を見て、
「世の中にはいろんなタイプの占い師がいます。
どの占い師も共通なことは、相談者にとってより良い未来を持たせてあげられること。
そこまでのアプローチをしていくのが私たちの務めです」
「・・・・・・・・・」
「実際に解決して行かなければならないのは、それぞれの本人でしかありません。
占いをしたからといって運気が良くなるなどありませんし、占いの結果が良いからといってそこに甘んじて自ら積極的に行動していかなければ、運命という時間の流れはストップしてしまいます」
だから・・・・・・
「そっか、わかりました。
どちらかを決めないと行けない、そういう時期が、今の彼女に必要な決断になるのね」
関係性を続けるも終わらせるも、それは彼女次第となるけど、どちらかを選択しないままでいると、時間の流れはそこでストップがかかってしまう。
だから、止まったままの彼女の時間を動かしていく必要があるんだ。
自分の中にある神様に問う・・・・・・
過去に止めてしまった本当の自分の姿を彼女が見つけるのならば、そのときこそ、新しい未来がやってくるのだろう。
私は・・・・・・
私たち占い師は、そっと見守るだけ・・・・・・
聖誕高校に通う高校生であり、占い師見習い兼助手をしている。
私の師は、明日風町で占いを生業とした相談業務を行っている占術師である。
タロットカードを初めとした様々な占術の知識を持ち、国内外からも鑑定の依頼がやってくる人気の占い師だ。
とはいっても、完全な口コミ制で鑑定を行っているため、鑑定依頼が殺到することはない。
今日日、テレビや雑誌などで持ちきりの有名占い師とは違い、悩みや不安を解消する陰の番人のような占い師である。
「お疲れ様です」
私がそういうと、占い師に笑顔が戻った。
占いが始まると師匠の表情や気配が変わる。
それは師匠いわく、占うを行うときは常に心を閉じて、自己の中にある先入観や主観を取り除かなければならないからだと言う。
「いえいえ。
先ほどの方は、ここにくる前から答えは分かっていましたからね。
あとは彼女がどのように答えを出していくのかを見守るだけです」
運命は生き物である。
そう師匠は言う。
常に日常の中での何気ない行動や選択で、未来に作られるであろう時間の流れは変わっていく。
だからこそ慎重に決断はして行かなければならないし、占い師の仕事も軽い気持ちで行ってはならない。
「ノア先生は何も望まないんですか?」
方舟ノア。
それが私の師である男の名である。
「彼女に対して? ですか」
ノアは私の問にしばらく何も言わなかった。
私は思う。
もしも、未来が見えているなら、それは伝えなければならないものだと。
でも、占い師はそれではいけない。
運命は一つ一つの決断の積み重ねによって作られている。
過去がなければ何も作られないし、想像する未来もやってこない。
占い道具を一通り片付け終えると、ノアは私の問に答えてくれた。
「期待はありますよ。
今が彼女にとって重要なときです。
これからの人生において、必要な切り替えポイントになっていますから」
・・・・・・そうなって、ほしい。
「乗り越えなくてはならない壁を、助言として言葉を伝えるのが占い師の役割です。
一緒に人生を歩んでいけるパートナーではありません。
生涯ずっと彼女と寄り添うことはできませんからね。
あくまでも、占い師は選択肢としての現在と未来を見せるが役割です」
私の中にある心のを察したのか、ノアは私にそういった。
依頼者に心を引き込まれないようにする・・・・・・
私が最初に教わったことだ。
まだ、私にはそれができていない。
今回、先生のもとにやってきた依頼人は二十代半ばの女性。もう五年くらい通ってきている常連さんである。
どうやら、その時からずっと同じ悩みを抱えているようだった。
その悩みというのが他でもない、浮気グセの治らなき彼氏さんのことだ。
高校生のときに知り合ってから、付き合い始めたのがその二年後で、その間にも何度も浮気、喧嘩、別れる別れない、離れられない、一緒にいたいけど、喧嘩になるから一緒にいたくないの繰り返しをずっとしていた。
そんな中、彼女の中では自分の気持ちがわからなくなって言ったという。
でも、きっと・・・・・・
「彼女は彼のことを今でもずっと愛しています。多分。
別れることが、彼女にとって本当に幸せなんでしょうか」
「それを決めるのは彼女自身です」
「じゃあ、占い師の役割はなんですか?」
「彼女の中にある神様に問う機会を作ることです」
「・・・神様?」
「言い方や言葉は違っていても良いのです。
心のずっと遠いところにある本心を受け止めなければなりません。
今、自分が決断しようとしていることが、正しい選択であるのか、と・・・・・・」
・・・・・・正しい、選択・・・・・・
ノアは納得のいかない表情の私を見て、
「世の中にはいろんなタイプの占い師がいます。
どの占い師も共通なことは、相談者にとってより良い未来を持たせてあげられること。
そこまでのアプローチをしていくのが私たちの務めです」
「・・・・・・・・・」
「実際に解決して行かなければならないのは、それぞれの本人でしかありません。
占いをしたからといって運気が良くなるなどありませんし、占いの結果が良いからといってそこに甘んじて自ら積極的に行動していかなければ、運命という時間の流れはストップしてしまいます」
だから・・・・・・
「そっか、わかりました。
どちらかを決めないと行けない、そういう時期が、今の彼女に必要な決断になるのね」
関係性を続けるも終わらせるも、それは彼女次第となるけど、どちらかを選択しないままでいると、時間の流れはそこでストップがかかってしまう。
だから、止まったままの彼女の時間を動かしていく必要があるんだ。
自分の中にある神様に問う・・・・・・
過去に止めてしまった本当の自分の姿を彼女が見つけるのならば、そのときこそ、新しい未来がやってくるのだろう。
私は・・・・・・
私たち占い師は、そっと見守るだけ・・・・・・