第10話 神殿《オリュンポス》って?2
文字数 1,960文字
鷂です。
もう何十年も潔斎やってるけど、食えないってイライラするよねぇ。
終わった後、何食べようかばかり考えてるもの。
金糸雀くらいだよ、平気な顔でアーモンドやクルミを山のように食ってランニングしてるの。ハムスターかね、あの子。
金糸雀お姉様は、不思議な健康法が好きなのよ。
デトックスとか、ファスティングとか。あの手の。
心が落ち着くんだって。
だから、慣れてるのよ。
の割には、いっつもイライラしてるけどねぇ。効いてんの?効いてアレなの?
効いてあれなの・・・?
鷂お姉様は、
神殿のお勤め終わったら、いつも焼肉食べ放題直行でしょ?
ジャージ着て並んでるから、お店の人に国体選手かなんかだと思われてたらしいもの。
私は、回転寿司か、国道沿いのインドカレー屋さん!
前、カレー屋さんに大嘴お兄様と待ち合わせて行ったら、店から小麦粉が無くなったの。ほら、ナン食べ放題だから。
うわあ、今度から60キロの小麦粉の袋持参で行きなさいよ。
うん、アンタ自体が回転寿司みたいだもんね・・・。
神楽って結構、体力いるじゃない?
腹ペコでやるのキツいし、宮城でやる時は、半分はショーだからさ、動きもデカくて食べないと動けないから、直前にガーッと食べて血糖値上げたりね。
そうそう。
私、着替え中に、かき氷シロップを飲むの。
ブルーハワイ味大好き!
うん、あれ、やめた方がいいわよ。
大体、何味なのよ、あれ・・・。
さて。神楽の衣装ね。
なぜか、男の衣装はやたらと凝ってて繊細なつくりで、女の衣装は重い!
しかも、手首と足首につけるあの
筋子並にびっしりの鈴!
あれ、本物のプラチナだもんね。
鉄下駄履いてランニングくらい疲れるもの!
そうそう。
しかも女の衣装はまるで鎧じゃない。重くて苦しくて。男じゃなきゃ着せられない。
男の衣装は身動きしやすいように軽くて、細くて柔らかい紐を何十本も使って結ぶのよね。だからこっちは女が着せる。
まあ、私はイライラするからやらないけども。
奥の院の話ですけど。
更に奥の、神様の寝室。
あそこに入れるのは神官長だけですね。
うん、危ないからね。
我々の神様は臥龍、眠る獅子なんて言うだろ。
ちょっとづつちょっとづつ慣らして騙し騙し様子見ながら入るんもんなんだよ。
なのに、白鷹お姉様は、アンタをいきなりつっこんだじゃない。
あれはひどい。
まあねぇ・・。
龍なんて見た事ないし、寝てるライオンもよくわからないけど。
ヒグマと言うよりは、マウンテンゴリラとかトドくらいの違和感と迫力はあったかなあ。
あれ?なんでいんの?みたいな。
ちょっとづつ子ゴリラとか、オットセイに擬態してから来るもんだろ的な事は感じましたね。
うん、ちょっと何言ってんのかわかんないけど。
まあまあ、ニュアンスはわかるわ。
宮廷に関わる、即位式や葬祭なんかの
祭禮は家令がやるとして。
神殿の表宮はまだしも、奥の院に仕える神官は、どうやって登用してるの?
うん・・・。
表宮はさ、まあ縁故が多いじゃない?
三年くらい修行がてら働いてみて、良かったら社員でお願いします、みたいなさ。
で、奥の院はさ、ある日、来れちゃったりする子が、やっぱりたまにいるわけ。
そしたらもう、逃さないよね。
え・・・?
好きでいるんじゃなかったの?
辞められないの?
いやあ、だって、人手不足じゃない?
ほら、ウチの神様、選り好みはげしい、めんどくさいやつだからさ。
そんなにブラックだったの?
あれ?でも、鷂お姉様のお母さんって、奥の院にお勤めの神官でしたよね?
うん。まずそこがおかしいじゃない。
あの人、西の修道院の副修道院長だよ?
なんで巫女が修道女やってんの?って話よね。
簡単に言うと神殿を出たのは私ができたからだから。
なんか嫌な予感がする。
鷂お姉様のお父さんって、家令よね。
そうそう。
大戦で戦死したけどね。
で、その前に、勝戴お姉様の下に仕えてたのが、私の母、鮎ちゃんよ。
で、神官家令の青鵐が巫女の鮎ちゃんに手を出してしまって。
勝戴お姉様が、やばいってんで、神殿を出してやったんだって。
当時は厳しいからさ。バレたら殺されるもん。
で、修道院なら管轄外で神殿は口も手せないからって、行けるようにしてくれたのよ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)