第29話 人助けは誰のため

文字数 745文字

画面上には、三人のスーツを着た女性が会議室のような場所で座っていた。

そしてマコとテロップで名前が出ている女性がテンション高く話し出した。

マコさんの話を要約するとこうだ。


東京都M市でプリンセス戦士が現れたと話題になっている。


藍崎ツネさん(85)は商店街を歩いていた所、ひったくり犯に狙われ鞄を取られた。ところがその犯人の男(25)と(27)はドレスを着た女に蹴られ、見事に捕まえられたそうだ。


そのドレスか十三年前に流行ったプリンセス戦士だったので、マニアの間でプリンセス戦士爆誕と話題になっている。

ここ、東京に正義のヒロインが誕生した。

東京女子チューバーの三人は私を神のように崇め、褒め称えてくれていた。



正直言うとすごく気分がいい。そのプリンセス戦士は私ですと叫びたかった。

みんなが冴えないと思ってるけれど、私は実はすごいのだ。

正義のプリンセス戦士。



「ほら百合香、気持ちいいだろう?人から認めらるのって」

市太郎の余計な一言も気にならないくらい、嬉しい。本当に自分はなんて単純なのだろう。



お母さんが部屋をノックし「市太郎君が買ってくれたお菓子たくさん残ってるから、みんなで食べましょう」と誘ってくれたので、リビングへと行った。

ひと月前の買い占めたお菓子が親戚やご近所に配りまくったけれど、まだ半分程残っているのだ。


市太郎の顔を見た高志は嬉しそうに市太郎にくっつき、お父さんとお母さんは微笑ましくその光景を眺める。

平和な日常の一コマだ。

次の瞬間、それを打ち消すようにインターホンが鳴らされた。

たまたまインターホンの近くにいたので「はーい」と画面を応答すると、怪しげなラテン系の外国人がドアップで映し出されていた。

そして怪しげな外国人は「ココニユリカイル?」と音割れを起こすような大きな声で叫んだ。
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