第34話 人助けは誰のため
文字数 1,044文字
ピエールのことはすっかり忘れた仕事終わり、穂花とご飯を食べる約束があったから、軽い足取りでハッピー歯科医院を後にした。
穂花に彼氏ができたというビッグニュースがある。私には一生彼氏なんてできることはないかもしれないだろう。だからこそ、自分のことのように嬉しい。
混雑した地下鉄を乗り継ぎ、足早に約束の新宿にあるカフェレストランに向かっていた。
いつ来ても夜の新宿は人で溢れかえっている。時間帯もあってか小さい子は見かけないが、若い人たちから八十歳ぐらいまでのお年寄りまで様々な年代の人が満遍なくいる。
みんな何しにこの街にあつまっているのだろう。かくいう私もその一人なのだけれど。
昼のような眩しい照明の家電量販店の端で立ち止まり、スマホでカフェの場所を見ていると、店内から悲鳴が聞こえた。
店内から沢山の人が足早に出てくる。
「強盗!誰か警察!」
そんな声が聞こえてきた。
なので私はすぐに右手を高く掲げた。もう心は決まっている。悪は絶対に許さない。
「プリンセススタートランスフォーム」
ビルとビルの間の狭い空から虹色の光が私を包み込む。
私に勇気と力を与えてくれるのだ。
周りの人たちが呆気に取られ私を見ている中、人波に逆らい店内へと入っていく。
化粧品の通りを抜け、小さなおもちゃが集まっている通りを抜けると、レジが二台見えてきた。向かって右側のレジで背の低い中年男性が出刃包丁を若い女性店員に突きつけている。
もう既に金を要求し終えた後のようだ。店員さんが震えた手でレジの中のお金を紙袋に入れている。
私に何の迷いもない。
強盗を背後から蹴った。強盗はあっという間に姿勢を崩し、レジ前の電池コーナーに突撃した。きれいに整列した電池は強盗の上に崩れ落ちる。
強盗は起き上がることなく、悲し気に天井を見つめていた。
華麗に決まった。
遠巻きに見ていたギャラリー達から拍手喝采を受ける。
気持ちいい、何て気持ちいいんだろう。
店員さんが恐怖で失神し倒れ込みそうになるのを抱き抱えた。
「お姉さん、かっこいい」
喝采を浴びる中で、もう一度強盗を見ると手のひらから血を流している。自分の出刃包丁で切ったようだ。
私の攻撃で血を流している。
その事実が段々と胸に込み上げて来た頃、外からパトカーと救急の音が聞こえた。
目の前をお巡りさんと救急隊が通り過ぎた。店員さんはいつの間にか女性警察官に介抱されている。
仕方がなかった、強盗を倒さなかったら被害者が出ていただろう。
仕方がないのだ。
やけに明るい白色の照明に照らされながら、立ち尽くしていた。
穂花に彼氏ができたというビッグニュースがある。私には一生彼氏なんてできることはないかもしれないだろう。だからこそ、自分のことのように嬉しい。
混雑した地下鉄を乗り継ぎ、足早に約束の新宿にあるカフェレストランに向かっていた。
いつ来ても夜の新宿は人で溢れかえっている。時間帯もあってか小さい子は見かけないが、若い人たちから八十歳ぐらいまでのお年寄りまで様々な年代の人が満遍なくいる。
みんな何しにこの街にあつまっているのだろう。かくいう私もその一人なのだけれど。
昼のような眩しい照明の家電量販店の端で立ち止まり、スマホでカフェの場所を見ていると、店内から悲鳴が聞こえた。
店内から沢山の人が足早に出てくる。
「強盗!誰か警察!」
そんな声が聞こえてきた。
なので私はすぐに右手を高く掲げた。もう心は決まっている。悪は絶対に許さない。
「プリンセススタートランスフォーム」
ビルとビルの間の狭い空から虹色の光が私を包み込む。
私に勇気と力を与えてくれるのだ。
周りの人たちが呆気に取られ私を見ている中、人波に逆らい店内へと入っていく。
化粧品の通りを抜け、小さなおもちゃが集まっている通りを抜けると、レジが二台見えてきた。向かって右側のレジで背の低い中年男性が出刃包丁を若い女性店員に突きつけている。
もう既に金を要求し終えた後のようだ。店員さんが震えた手でレジの中のお金を紙袋に入れている。
私に何の迷いもない。
強盗を背後から蹴った。強盗はあっという間に姿勢を崩し、レジ前の電池コーナーに突撃した。きれいに整列した電池は強盗の上に崩れ落ちる。
強盗は起き上がることなく、悲し気に天井を見つめていた。
華麗に決まった。
遠巻きに見ていたギャラリー達から拍手喝采を受ける。
気持ちいい、何て気持ちいいんだろう。
店員さんが恐怖で失神し倒れ込みそうになるのを抱き抱えた。
「お姉さん、かっこいい」
喝采を浴びる中で、もう一度強盗を見ると手のひらから血を流している。自分の出刃包丁で切ったようだ。
私の攻撃で血を流している。
その事実が段々と胸に込み上げて来た頃、外からパトカーと救急の音が聞こえた。
目の前をお巡りさんと救急隊が通り過ぎた。店員さんはいつの間にか女性警察官に介抱されている。
仕方がなかった、強盗を倒さなかったら被害者が出ていただろう。
仕方がないのだ。
やけに明るい白色の照明に照らされながら、立ち尽くしていた。