〈第七章あらすじ&登場人物紹介〉

文字数 4,464文字


===第七章 あらすじ===

 メイシアとハオリュウの父、藤咲コウレンを救出すべく、ルイフォンとリュイセンは斑目一族の別荘に潜入した。
 厨房から入った直後、タオロンの娘ファンルゥに見つかってしまうが、見回りのふりをして事なきを得る。ファンルゥは「地下にいる〈天使〉を見せたい」と言うが、ルイフォンたちは振り切るようにして、その場を立ち去った。

 同時刻、鷹刀一族の屋敷では、捕虜にした男たちから情報を引き出すため、薬物の扱いに長けたミンウェイが自白剤の投与を試みていた。また、捕虜のうちのひとりが親しかった先輩であるため、緋扇シュアンも同席していた。
 驚くべきことに、捕虜たちは〈(ムスカ)〉の記憶を書き込まれ、〈影〉とされた者たちだった。先輩は元には戻らないと悟ったシュアンは、自らの手で敬愛する先輩を射殺する。

 一方、斑目一族の別荘では、ルイフォンたちは無事にコウレンと会うことができたものの、怯えられてしまう。説得を試みるルイフォンだったが、その途中でタオロンが近づいてくる気配を感じ、やむを得ずリュイセンがコウレンを気絶させた。
 侵入者であるルイフォンたちに襲いかかるタオロン――と思ったら、タオロンの狙いはルイフォンたちではなく、コウレンだった。しかも、凶賊(ダリジィン)にはご法度の銃まで持ち出して、タオロンはコウレンの命を狙う。
 心情的にはルイフォンたちに近いタオロンが何故、と思いながらも、リュイセンがタオロンを倒す。気絶したままのコウレンを連れて脱出の途についた。

 屋敷では、ルイフォンを心配するメイシアを、異母弟ハオリュウが訪ねていた。彼は、メイシアのルイフォンへの身分違いの想いを諦めるよう、釘を刺しにきたのだった。
 けれど、ふたりの想いが固いことを知り、それならばと「家事もできない姉様では今は無理」と、仲を認めつつも、ささやかな嫌がらせをする作戦に変更した。
 会話の途中で、メイシアがいつも身に着けているペンダントを、ハオリュウは見たことがないと言う。
 また、斑目一族と決別したと思われている厳月家だが、まだ事件に関わっているのではないかとメイシアは考え、不安に思っていた。

 ルイフォンたちは、潜入してきたときと同じく厨房から脱出しようと思っていた。しかし、そこではファンルゥが待っていた。しかも、彼女ひとりではなく、〈七つの大罪〉の〈悪魔〉、〈(サーペンス)〉であるホンシュアも一緒だった。
 初対面のはずのホンシュアだが、ルイフォンとリュイセンを知っており、ルイフォンに「逢いたかった」と言う。彼女は理由も告げずにルイフォンに謝罪の言葉を繰り返し、「メイシアを選んだ」「私が仕組んだ」などと謎めいたことを言う。
 ホンシュアが「ライシェン」という名前を口にした瞬間、ルイフォンの脳裏にメイシアのペンダントの記憶が描き出され、激しい頭痛に見舞われた。その様子を見たホンシュアが「駄目」と叫び、彼女の背中から光の羽としか言いようもないものが出現した。
 それは〈天使〉の羽なのだと、ファンルゥが解説する。羽の光に包まれると、ルイフォンの頭痛は収まった。しかし、そこに〈(ムスカ)〉が現れた。

(ムスカ)〉と対戦することになるとリュイセンは身構えたが、〈(ムスカ)〉はホンシュアと口論を始めた。ふたりの会話から、記憶介入は〈天使〉のホンシュアのみが出来ることであり、〈(ムスカ)〉はそれを利用していること。ホンシュアが『デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)』というもののために、〈(ムスカ)〉の保つ技術を必要としていること、が分かる。
 ホンシュアは、熱暴走といわれる高熱の状態に陥っており、〈(ムスカ)〉は冷却剤を置いて立ち去ろうとする。そこをルイフォンが、「何故、俺たちを無視する」とひきとめると、〈(ムスカ)〉は「興味があるのはイーレオだけ。貴族(シャトーア)はどうでもいい」と答える。ルイフォンが不意打ちで〈(ムスカ)〉のサングラスを弾き飛ばすと、そこに表れた顔は、どう見ても鷹刀一族のものだった。
 ルイフォンたちが脱出する間際、ホンシュアはコウレンに「巻き込んでしまって、ごめんなさい」とひざまずき、彼を光で包んだ。

 無事、鷹刀一族の屋敷に戻り、ルイフォンはメイシアと再会した。これから彼女と一緒に居るために、明日になったらきっちりコウレンやイーレオに挨拶すると約束する。
 幸せいっぱいのふたり。だが、厳月家が不穏な動きを見せているとの知らせを、娼館の女主人シャオリエが持ってきたのだった。


===登場人物===

[鷹刀一族]
 凶賊(ダリジィン)と呼ばれる、大華王国マフィアの一族。
 実は、秘密組織〈七つの大罪〉の介入により、近親婚によって作られた「強く美しい」一族。

鷹刀ルイフォン
 凶賊(ダリジィン)鷹刀一族総帥、鷹刀イーレオの末子。十六歳。
 母から、〈(フェレース)〉というクラッカーの通称を継いでいる。
 端正な顔立ちであるのだが、表情のせいでそうは見えない。
 長髪を後ろで一本に編み、毛先を金の鈴と青い飾り紐で留めている。

※「ハッカー」という用語は、「コンピュータ技術に精通した人」の意味であり、悪い意味を持たない。むしろ、尊称として使われていた。
 「クラッカー」には悪意を持って他人のコンピュータを攻撃する者を指す。
 よって、本作品では、〈(フェレース)〉を「クラッカー」と表記する。

鷹刀イーレオ
 凶賊(ダリジィン)鷹刀一族の総帥。六十五歳。
 若作りで洒落者。

鷹刀ミンウェイ
 イーレオの孫娘にして、ルイフォンの年上の『姪』。二十代半ばに見える。
 鷹刀一族の屋敷を切り盛りしている。
 緩やかに波打つ長い髪と、豊満な肉体を持つ絶世の美女。ただし、本来は直毛。
 薬草と毒草のエキスパート。医師免状も持っている。
 かつて〈ベラドンナ〉という名の毒使いの暗殺者として暗躍していた。
 父親ヘイシャオ=〈(ムスカ)〉? に溺愛という名の虐待を受けていた。

鷹刀エルファン
 イーレオの長子。次期総帥。ルイフォンとは親子ほど歳の離れた異母兄弟。
 感情を表に出すことが少ない。冷静、冷酷。

鷹刀リュイセン
 エルファンの次男。イーレオの孫。ルイフォンの年上の『甥』。十九歳。
 文句も多いが、やるときはやる男。
『神速の双刀使い』と呼ばれている。
 長男の兄が一族を抜けたため、エルファンの次の総帥になる予定である。

草薙チャオラウ
 イーレオの護衛にして、ルイフォンの武術師範。
 無精髭を弄ぶ癖がある。

料理長
 鷹刀一族の屋敷の料理長。
 恰幅の良い初老の男。人柄が体格に出ている。

キリファ
 ルイフォンの母。四年前に謎の集団に首を落とされて死亡。
 天才クラッカー〈(フェレース)〉。
 右足首から下を失っており、歩行は困難だった。
 かつて〈七つの大罪〉に属していたらしい。
 鷹刀一族の屋敷に謎の人工知能〈ベロ〉を遺していた。
 もとエルファンの愛人。エルファンとの間に一女あり。

〈ケル〉〈ベロ〉〈スー〉
 ルイフォンの母が作った三台の兄弟コンピュータ。
 ただし、〈スー〉は、まだできていないらしい。
〈ベロ〉は、独自の判断で、「敵を全滅する」というルイフォンの指示を無視した。


[藤咲家]

藤咲メイシア
 貴族(シャトーア)の娘。十八歳。
 箱入り娘らしい無知さと明晰な頭脳を持つ。
 すなわち、育ちの良さから人を疑うことはできないが、状況の矛盾から嘘を見抜く。
 白磁の肌、黒絹の髪の美少女。

藤咲ハオリュウ
 メイシアの異母弟。十二歳。
 十人並みの容姿に、子供とは思えない言動。いずれは一角の人物になると目される。
 斑目一族に誘拐されていたが、解放された。

藤咲コウレン
 メイシア、ハオリュウの父親。
 貴族(シャトーア)の藤咲家当主。
 斑目一族に囚えられていたが、ルイフォンとリュイセンによって救出された。

藤咲家当主の妻
 メイシアの継母。ハオリュウの実母。
 メイシアが凶賊(ダリジィン)である鷹刀一族のもとへ行ったあと、心労で正気を失ってしまった。ハオリュウはそれを知っているが、異母姉のメイシアには隠している。


[繁華街]

シャオリエ
 高級娼館の女主人。年齢不詳(若くはないはず)
 外見は嫋やかな美女だが、中身は『姐さん』。
 元鷹刀一族であったが、イーレオの負担にならないように一族を離れた。

スーリン
 シャオリエの店の娼婦。
 くるくる巻き毛のポニーテールが似合う、小柄で可愛らしい少女。
 本人曰く、もと女優の卵。
 情報を得るために、厳月家の三男を呼び出してくれた。

トンツァイ
 繁華街の情報屋。
 痩せぎすの男。

キンタン
 トンツァイの息子。ルイフォンと同い年。
 カードゲームが好き。


[斑目一族]

斑目タオロン
 よく陽に焼けた浅黒い肌に、意思の強そうな目をした斑目一族の若い衆。
 堂々たる体躯に猪突猛進の性格。
 二十四歳だが、童顔ゆえに、二十歳そこそこに見られる。
 斑目一族の非道に反感を抱いているらしいが、逆らうことはできないらしい。
(ムスカ)〉に、斑目一族から離反して、自分の手駒にならないかと誘われている。

斑目ファンルゥ
 タオロンの娘。四、五歳くらい。
 くりっとした丸い目に、ぴょんぴょんとはねた癖っ毛が愛らしい。


[〈七つの大罪〉]

〈七つの大罪〉
 現代の『七つの大罪』《『新・七つの大罪』》を犯す『闇の研究組織』。
 知的好奇心に魂を売り渡した研究者を〈悪魔〉と呼ぶ。
〈悪魔〉は〈神〉から名前を貰い、潤沢な資金と絶対の加護、蓄積された門外不出の技術を元に、更なる高みを目指す。代償は体に刻み込まれた『契約』。

(ムスカ)〉 = ヘイシャオ?
〈七つの大罪〉の〈悪魔〉。
 ミンウェイの父で、本名はヘイシャオ。
 イーレオが総帥位を奪わなければ、鷹刀一族の中心にいたはずの人物。
 鷹刀一族を恨んでいる。 
 医者で暗殺者。
 娘のミンウェイを異常な愛情で溺愛している。

ホンシュア = 〈(サーペンス)〉? = 天使?
 鷹刀一族に助けを求めるよう、メイシアを唆した女。
 仕立て屋と名乗っていた。
 背中から光の羽を出し、まるで天使のような姿になる。
「記憶の書き込み」ができるらしい?
 ルイフォンやリュイセンのことを知っている……?
 メイシアのことを『選んだ』と言っている。

ライシェン
 ホンシュアがルイフォンに向かって呼びかけた名前。
 それ以外は不明。

『デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)
(サーペンス)〉が企んでいるらしい計画。
(ムスカ)〉の協力が必要であるらしいのだが、すべてが謎に包まれている。
 どうやら、〈(サーペンス)〉は〈(ムスカ)〉を嫌っているらしいのだが、この計画のために手を組んだようである。


[警察隊]

緋扇(ひおうぎ)シュアン
『狂犬』と呼ばれるイカレ警察隊員。三十路手前程度。
 ぼさぼさに乱れまくった頭髪、隈のできた血走った目、不健康そうな青白い肌をしている。
 凶賊(ダリジィン)の抗争に巻き込まれて家族を失っており、凶賊(ダリジィン)を恨んでいる。
 凶賊(ダリジィン)を殲滅すべく、情報を求めて鷹刀一族と手を結んだ。
 敬愛する先輩が〈(ムスカ)〉の手に堕ちてしまい、自らの手で射殺した。


===大華王国について===

 黒髪黒目の国民の中で、白金の髪、青灰色の瞳を持つ王が治める王国である。
 身分制度は、王族(フェイラ)貴族(シャトーア)平民(バイスア)自由民(スーイラ)に分かれている。
 また、暴力的な手段によって団結している集団のことを凶賊(ダリジィン)と呼ぶ。彼らは平民(バイスア)自由民(スーイラ)であるが、貴族(シャトーア)並みの勢力を誇っている。
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登場人物紹介

鷹刀(たかとう)ルイフォン

 凶賊鷹刀一族総帥、鷹刀イーレオの末子。十六歳。

 母から、〈猫(フェレース)〉というクラッカーの通称を継いでいる。

 端正な顔立ちであるのだが、表情のせいでそうは見えない。

 長髪を後ろで一本に編み、毛先を金の鈴と青い飾り紐で留めている。

藤咲(ふじさき)メイシア

 貴族の娘。十八歳。

 箱入り娘らしい無知さと明晰な頭脳を持つ。

 白磁の肌、黒絹の髪の美少女。


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