文字数 7,875文字

 光岡君、お互い、元気でなによりだね。
 何かスポーツでもやっているの?身体に張りを感じるよ。……筋トレだけ?でも、やるとやらないじゃ、全然違うでしょ。続けることは大事だよね。
 僕もさ、もう四十を過ぎて、たまに、同期の知り合いが亡くなったなんて連絡が来ると、もうそういう歳になってしまったのかって思ったりする。身体も徐々に衰えてくるんだなって。君も最近は健康の大切さが身に染みるだろう?
 今回の件、引き受けてくれて感謝するよ。しかし、当初はお先真っ暗な気分になっちゃって、弁護士といっても誰に頼めばいいのかわからないし。まして急な相談に乗ってくれる人となると、結局君しか思いつかなくて。
 ああ、ごめん。近況報告もろくにしてなかったよね。
 三年前から、桜新町で心療内科のクリニックを始めたんだ。『磯島メンタルクリニック』という、何の工夫もない名前だけど。外来だけで、僕と、受付の女性の二人だけでやっている。大学病院の勤務もそろそろ辛くなってきた。精神科は、特別な設備もいらないし、うちみたいな小さなクリニックなら、看護師も必要ないから、他の科より開業しやすいという事情もあるんだけどね。とはいえ、実家は会社員の家庭だから、開業資金を用意するのは結構大変だったんだ。あちこちから借金して、不安だったけど、今は何とか経営が成り立っているって感じかな。僕のような新規開業医にもそこそこの数の患者が来るほど、今の世の中、人間関係のストレスで心を病む人たちが多いんだな。
 君の方はどうだい?新聞なんかの知識しかないけど、弁護士も昔と違って、食べていくのが大変みたいじゃないか。優良顧客を掴まないと、安定した収入もなかなか得られないっていうよね。優秀な君のことだから、そんな心配は無縁だとは思うけど。

 ……つい余計なことを言ってしまって悪かった。たまに会えたので嬉しくなってしまってさ。
 本題に入るとして、岩井奈津子さんは、大丈夫だろうか。彼女のために、できるだけのことはしたいと思っている。さっき、他に頼むあてがなくて君に頼んだということを言ったけれども、実はそれだけじゃない。君なら彼女のことをよく知っているから、というのもあったんだ。
 あの日のことについてもう一度、順を追ってできるだけ詳しく話してほしいということなので、警察に話したことも含めて、話すつもりだけど、あの晩に立て続けに起きた悲劇は、何と言ったらいいのか、今でも信じられない気がするよ。呪われたなんていう言葉じゃ生易しく感じられる。神が与えた劫罰とでも言いたくなるほどの衝撃だった。しかもあの二人にはそんな目に遭ういわれは何一つなかったんだからね。日を置いているから、細かいところは間違ってるかもしれない。おかしいところや納得のいかないところがあったら、遠慮なく訊いてくれよ。

                    ***

 事件のあった先月の十日、僕が上用賀の藍澤直孝先生のお宅に着いたのは、七時を過ぎた頃だった。冬だから、もうすっかり暗くなっていた。冷たい北風の吹く寒い日だったことは覚えている。
 藍澤家には行ったことないと思うけど、馬事公苑の近くなんだ。あのあたりは閑静な住宅街だよ。東急も小田急も、駅からはちょっと遠いけどね。
 藍澤家は、豪邸というほどじゃないが、ホームパーティも無理なくできる程度に広い家ではある。敷地も二百坪くらいあるんじゃないかな。車が三台停められる駐車場もある。元々は、あの辺の地主だったらしい。
 藍澤先生の奥さんの千鶴さんは専業主婦。社交的な性格で、あちこち習い事にも行っている。そこで知り合った友人なんかを呼んで、簡単なホームパーティや、お茶会なんかをよくやってたんだ。僕も何度か呼ばれた。パーティといっても、軽い食事と飲み物が出るだけで、あとは世間話をするだけだよ。その方が気楽でいいと思うな。
 その夜も、特に何の名目というわけではなく、千鶴さんからいつものように『来週の夜、パーティやらないから来ませんか?』と連絡があったので、行ったんだ。
 その日、僕のほかに招かれたお客は、三人、いずれも千鶴さんの知り合いの女性で、面識がある人たちばかりだった。
 僕が着いたときには全員そろっていて、リビングで話していた。千鶴さんと一緒に造花づくりの教室に通っている、大庭さんという、近所に住む五十代の主婦、次に岩井さん、君も知ってのとおり藍澤先生の教え子で、化学メーカーの研究所に就職した。卒業後も藍澤研究室との共同研究に加わっていて、千鶴さんとも親しくなったようだ。最後の一人が、長谷さんだったかな。長谷由布子。藍澤先生の姪で、先生と同じ大学だけど、学部は文学部だね。
 そうそう、僕自身がどうして藍澤家に出入りするようになったか、言うのを忘れていた。一年くらい前に、クリニックの患者として来院した千鶴さんと知り合ったんだ。もちろん、藍澤先生も、岩井さんを通じて名前だけは知っていたけど、学部も違うし授業も受けたことはないので、面識はなかった。君は法学部だから、なおさらだろう。ああ、一般教養科目で先生の講義を取ったことがあるのか。なるほど
 千鶴さんには、どういうわけか気に入られて、藍澤家のパーティにも呼ばれるようになったというわけだ。もちろん、患者との私的な付き合いはご法度だけど、千鶴さんは、疾患というほどのものでもなく、二三回、話を聴いただけだった。患者でなくなれば特に問題はないだろう。もちろん、ほかの人たちには、英会話教室で知り合ったことにしていた、
 話を戻して、藍澤先生は学校の用事で少し遅くなるということだったので、僕を含めて五人で先にいただいた。
 お互い、初対面じゃないし、僕も職業柄、喋るのは嫌いではないので、話は弾んだ。大庭さんと会うのは何度目だったかな。お喋り好きなひとで、あまり噂話のネタを提供するのもどうかと思うので、あまり喋らないようにはしてるんだが、つい、相手のペースに乗せられちゃうんだな。
 『磯島先生も、武蔵野学院なんですよね。しかも医学部でしょ。すごいわね』
 『いや。そんなことはないです』
 『やっぱり、医学部は別格よね』と千鶴さん。
 『藍澤先生と岩井さんは理学部、現役の由布子さんは文学部だし、千鶴さんも確かそうなんでしょ。みんな武蔵野のOBなんだ。私だけ仲間はずれなのね』
 『たまたまですよ』
 『大庭さんだって、都内の名門女子大を出ているじゃない。お嬢様学校で有名な』
 『ほかの学生はそうだったかもしれないけど、私は別にお嬢様でも何でもありませんもの。ところで、私の甥が会社勤めしてるんですけれど、磯島先生のお知り合いに、いいお嬢さんいないかしらね』
 『そうですね、いないこともありませんが……』
 『ほんとうは、由布子さんなんか、いいと思うんだけど』
 『わたしは結婚なんてまだ』
 『女性も働くのが当然の世の中ですものね。でも、わたしの妹みたいに、仕事に熱中しすぎちゃうと、気づいた頃には三十後半で、めぼしい男性はみんな結婚しちゃってて、なんていうこともありますからね。高齢出産って、思うほど簡単じゃないし、子育ても体力がいるし、結婚はなるべく早い方がいいわよ』
 『はあ』
 そんな、よくあるやり取りが続くうち、始まってから一時間くらい経ったかな。七時頃だと思う。千鶴さんが、もうそろそろ先生が駅に着く頃だ、と言って、用賀駅まで車で迎えに出かけた。駅から遠いので家まではバスに乗るけど、みんな待っているので、車で迎えに行くことにしたんだ。でも、それが僕らが生きている千鶴さんを見た最後になった。
 しばらく残りのメンバーで会話が弾んでいたが、『遅いわね、二人』と言い出したのは、大庭さんだった。時計を見ると、もう、八時を回っている。確かに用賀駅までは、道路が混んでいたとしても、二十分もかからないだろう。往復で一時間もかからず戻って来れるはずだった。
 『先生、まだ着かないのかしらね。あんまり遅くまでお邪魔しちゃ悪いし』
 『買い物でもしてるんじゃないでしょうか』
 と言ったのは長谷さんだった。そうかもしれない、と言っていると、玄関のドアが開く音がした。
 『噂をすればって、やつね』と大庭さんが小声で言った。
 入ってきたのは、藍澤先生一人だけだった。
 『お帰りなさい、先生』
 『あれ、千鶴は?』
 『え、千鶴さんは、一時間以上前に、先生をお迎えに行ったはずですけど』
 『いや、迎えに来るって言ってたのに、いつまでたっても来ないから、歩いて来たんです』
 『じゃあ、千鶴さんはどこへ行ったんだろう』
 藍澤先生も首を捻った。
 『いつもの場所で待ってたんだがな。道路も空いていたし』
 『急に用事を思い出して、買い物にでも行ったんじゃないかと言ってたんですけど』
 『そうかもしれないな。じゃあ、少し待っているか』
 先生はそう言って、普段着に着替えて来ると、僕らと一緒に腰を落ち着けた。鼻声で、風邪をひいているような様子だった。心なしか、ぐったりとして、顔色もよくないようだ。
 『冬になると、必ず、風邪を一二回はひくんですよ。酒を飲むと少しよくなるんですが。皆さん、お酒は召し上がらないんでしたか』
 『磯島さんが、そのウイスキーを一口だけ飲んだだけです』
 ウイスキーというのは、僕のために千鶴さんが、一口だけ飲んでみない、と言って出してくれた先生専用のボトルだった。
 『先生、すみません。ウイスキー久しぶりなんで、つい、味見をしてしまいました』
 『いや、ご遠慮なく。たいした品じゃありませんから。いつも安酒しか飲まないので。じゃあ、僕もいただこうかな。まだだいぶ残ってますね。もう一杯どうです?あまりお口には合いませんでしたか』
 『いや、そんなにお酒は強くないので、ウイスキーの甘い香りは好きなんですが、一口以上飲むと、ヤバいと思いまして。でも、おいしかったです』
 先生はウイスキーが好きで、スコッチが多いらしいけど、その日は国産の、昔僕の父親がよく飲んでた黒い瓶のやつだった。ラベルが懐かしくて、千鶴さんが飲んでみない、というので、つい手が出てしまったんだ。
 先生は、ロックでがぶっと一気に呷って、『うっ』と顔を顰めた。
 『どうなさいました』
 『いや。なんだか、この酒、変な味がするな。風邪をひいているから、もともと匂いがよくわからないんだが。こんな味だったかな』
 『僕は、別に気がつきませんでしたけど』
 『そうですか』
 先生は、しばらく黙って何ごとかを思い巡らしているような様子だったが、もう一杯、さらにグラスについで、ごくりと飲んだ。
 『何も食べずに、いきなりこんな飲み方すると、胃に悪いって女房には言われるんですが、すきっ腹に流し込むと、喉と胃がかっと熱くなって、それがたまらないんですよ』
 と笑顔で言った。
 『お酒に強い人はいいですよね。楽しみがあって。私なんて、主人が生きていた頃、酔った主人の息を嗅いだだけで、酔っ払ってしまったくらいなんですもの。ケーキも、たまにブランデーとかリキュールですか、洋酒がきいているのがあって、そんなのを食べると……あれ、どうなさいました?』
 大庭さんの声に、先生を見ると、先生が苦しみだしている。
 『うっ……』
 見る見るうちに先生の顔が土気色になり、胸をかきむしった後、声を発することもできずにばたっと倒れてしまった。みんな声も出ず、唖然とした顔で見守るだけだった。最初に悲鳴を上げて、先生の背中に手を置いて泣き出したのは、大庭さんだった。
 救急車が来るまでには、もう、先生は亡くなっていた。あっという間の出来事だった。

 悲劇はそれだけじゃない。警察から、千鶴さんが、交差点で大型トラックに追突されて亡くなったという連絡がきたのは、そのすぐ後だった。駅に着く手前だったらしい。頭を強く打って即死だったという。あとでわかったんだが、そそっかしい千鶴さんは携帯や免許証を財布ごと部屋に置き忘れていたので、家になかなか連絡がとれなかったんだ。いつまでも先生が来ないので、帰ろうとしたんだろう。警察の話では、トラックの運転手は酒気帯びだったらしい。悪いことは重なるといってもほどがあるよね。今でも言うべき言葉が見つからない。
 その後の混乱は省略する。想像はつくだろう。交通事故死と、変死、その二つが重なったんだから。一瞬にしてこの家の住人が二人ともいなくなってしまったんだ。パニックに陥ったと言ってもいい。長谷さんは泣き出すし、僕なんかも、どうしたらいいか途方に暮れたし。とりあえず大場さんと僕がそれぞれ警察に連絡したが、千鶴さんの方は、交通事故で事件性はなかったから、まだいい。何とか、大阪に住む千鶴さんの妹と連絡がついて、至急来てもらうことになった。問題は先生の方だ。事故ではなく、事件の可能性もあるということで、実に念入りに調べられた。全員、半分犯人扱いだった。逃亡しないよう、あの家に拘束されて、開放されたときには日付が翌日に変わっていたよ。
 警察の発表では、シアン化カリウムによる中毒死。ご存知、青酸カリだ。
 ウイスキーに入っていたのは間違いない。それ以外に先生が口に入れたものはないからね。氷と、氷を容れたアイスペールも調べたけど、そちらには毒は入っていないということだった。先生がたまたま入れた氷にだけ入っていたということも考えられなくはないけど、まあ、その可能性はないだろうということだった。
 一方、ウイスキーの中からは、致死量を超える青酸カリが検出された。
 誰かがウイスキーに毒を入れたのは間違いない。でも、僕が飲んだときには、なんともなかった。僕が飲み残していたグラスの中身も調べられたけど、まったく毒は入っていなかった。
 ということは、つまり、僕が飲んだあと、誰かが瓶に入れたことになる。
 でも、そんなことができただろうか?
 千鶴さんがキッチンから持ってきたあと、ウイスキーは、ずっとテーブルに置いてあった。誰もビンには触っていないと思うよ。僕も触れていない。水割りは千鶴さんがつくってくれた。実際、瓶からは千鶴さんの指紋しか出てこなかったようだ。
 まあ、指紋は後でふき取ったのかもしれないけど、問題は、他の人に気づかれずに毒を入れるタイミングがあったのだろうか、ということだ。
 というところまで考えてきて、誰一人、席を立たなかったわけじゃないことに気づいた。
 これは警察にも言ったことなんだけど、一度だけ、ほとんど全員が部屋からいなくなったときがあった。千鶴さんが出かける直前だったか、長谷さんが廊下で皿を割ってしまったんだ。千鶴さんに代わって彼女がテーブルの上の空いた皿を片付けてたんだが、僕もトイレに行こうと思ってすれ違いざま、彼女の腕と接触してしまったんだよ。
 『すみません。きれいなお皿を割ってしまって。弁償します』
 『いや、僕が当たったんだから、僕が弁償するよ』
 音を聞きつけてやってきた千鶴さんは、
 『あら、いいのよ。気にしないで。そんなたいした皿じゃないわ。百円ショップで売ってるような皿だから。それより、怪我はない?』
 『はい、大丈夫です』
 千鶴さんは大して気にも留めない感じでさらっと言うと、床を拭いて、戻った。そうだな、時間にして一二分ほどじゃないか。確かにその間は、部屋には岩井さんしかいなかったかもしれない。大庭さんは部屋にはいなかったと思う。そう、トイレから出てきた大庭さんが、自分も片付けを手伝おうとして、千鶴さんに、大丈夫、と声をかけたのを憶えている。
 当日の状況はそんな具合だった。
 そして翌々日、岩井さんが逮捕された、という知らせを受けた。
 藍澤先生殺害の容疑だという。
 ショックだった。なんで彼女が、と思いが駆け巡った。だって彼女はそんなことをするひとじゃないだろう。君もよくわかっているはずだと思うけど。だから、何はともあれ、君が弁護士をしているのを思い出して連絡したというわけさ。
 ただ、君の話で、奈津子さんが藍澤先生と、一時期不倫の関係にあったらしいというのには、正直驚いた。
 あんなに清楚で純情そうなひとが、って、今回の事件で一番ショックだったよ。
 本人は先生との不倫を否定しているんだってね。仕事の関係で親しくしていただけだと。肉体関係がない限り、いくらお互いに恋愛感情を抱いていても、不倫とは言わないんだろう。
 でもそれはあくまで法律上の話なんだろう。相手に離婚請求ができるかどうかっていうような。彼女にとっては関係がそれほど深くはなかったということは、有利になるのかな。あ、刑事と民事は違うのか。
 女性は厳しいからね。僕の別れた女房なんか、キスを一度でもしたら不倫って言い張ってたからね。でも、離婚したのは、僕が不倫したからじゃないよ。女房の方が、会社の上司と不倫していたんだ。それも、僕と結婚する前からさ。それ以来、女性の言うことは信用しないことにしてるんだ。もう、結婚なんてこりごりだな。一年足らずの結婚生活だけど、いい勉強になったと思っているよ。君の方はまだ結婚しないのか。岩井さんのことも忘れていい頃だと思うけど。……まあ、それはいい。また話がそれた。失礼。
 つまり、考えられる動機としては、藍澤先生が、奥さんと別れて自分と結婚する約束をしたのに、いつまでも実行してくれないので、逆恨みして、先生と奥さんを殺そうとしたっていうんだね。動機以外でも、彼女しか一人になるチャンスがなく、青酸カリを入れることができたのは、彼女しかいない、ということ、それと、自宅から実際に青酸カリが発見されたことが決め手だと。
 青酸カリなんて、簡単に手に入るわけはない。でも、この事件ではそうでもなかったろうね。藍澤先生は有機化学の専門家で、大学研究室には試薬として保管されていたはずだし、教え子の奈津子さんも、化学メーカーの研究員をしていて、一般人と比べて持ち出す機会はあったはずだ。
 しかも、藍澤研究室のシアン化カリウムが実際に紛失していたんだってね。彼女、しょっちゅう、藍澤研究室には出入りしていただろうからな……
 でも、いずれも状況証拠じゃないか。誰も毒を入れたのを見たわけじゃないし。彼女が隠し持っていたという青酸カリの瓶も、現場ではなくて自宅にあったわけだろう。あの夜、警察が来て各自の身体検査や持ち物検査をしたけど、不審物は見つからなかった。つまり、それを実際に使用したかどうかは断定できないわけだ。もちろん、持ち出したのは、別の罪になるかもしれないが。いや、そもそも、彼女が所持していたという青酸カリが藍澤研究室のものかどうかすら、証明されたわけじゃないんだろう。警察はどう考えてるんだ。状況は相当厳しいのかな?
 でもさ、何度も言うけど、恋は盲目とはいえ、彼女のような聡明な女性が、そんなことをするとはどうしても思えないんだよな。精神科医としての所見というわけじゃなく、常識的にそう思うというだけなんだが。それと、青酸カリなんか使えば、自分が一番疑われるってことは、当然予想できたと思うんだ。
 なに、犯行を認めた?
 最初に言ってくれよ。本当に自分がやったって言ったのか。なぜだ……
 いいよ。君も職務上の守秘義務があるから、詳しい話をできないことは承知しているさ。公判になったら、いつでも証言に立つさ。僕は彼女が無実だって信じているから」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み