第5話

文字数 396文字

山村へ帰って来た頃には、昼を過ぎていた。
あれだけ降った雪は、きれいに消えていた。
けれど、僕は知っている。
一度積もったら、春までずっと消えずに残る雪のある事を。
谷底近く、日の当たらない場所に、ひっそりと。
きみの白が、僕の真っ黒な心のやっぱり谷底に、いつまでも小さく、けどもまばゆく、白く光りつづけるみたいに。
僕は、それを解かして消そうと、たくさんのひとたちにぶつかって、その摩擦熱や涙雨、なんでも使って行こうと思う。
きみ以外の、なんでも。
そして、僕は思うんだ。
きみを忙しくしたのも、くるしくしたのも僕だ。
けれど、きみはほんとに僕と同じくらいくるしく、忙しいのだろうか?
LINEをブロックしたのは、通話がしたいからなんだよ。
でも、きみは、かけてこない。
忙しさ?、通話料?
それで僕は気付いたんだ。
この恋は、報われないと。
ただ、僕が火傷するだけ。
そんな恋を終わらせるのに、何の支障もない。
僕の心以外。

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