素晴らしい職場

文字数 297文字

 いつものように母の死体を背負って、夜の散歩をしていると、巡回中の警察官に呼び止められた。
「その死体はどなたですか」
「母です」
 警察官は、懐中電灯で母の死体の顔と俺の顔を交互に確かめた。
「失礼しました、結構です」
 その警察官も、死体を背負っていた。俺は、警察官が背負っている死体が誰か尋ねた。
「殉職した上司です」
 警察官は少し照れながら答えた。
「素晴らしい職場ですね」
 俺は本当にそう思ったので、褒めた。警察官は笑顔になった。俺たちは別れた。
 俺はコンビニに入った。
 男の店員が派手な女の死体を背負ってレジを打っていた。
 けっ、どうせ恋人か何かだろう。
 俺はビールを手に取り、レジに強く置いた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み