ノートを見て

文字数 303文字

 僕には友だちがいない。
 今日も学校が終わり、一人で家に帰り、誰もいない家に荷物を置いて、一人で公園に行き、一人で遊んでいた。
 ふと足元を見ると、一匹の蟻がいた。
「踏み潰しちゃおうかな」
 僕は思った。
 そして、僕は蟻を踏み潰した。
 それからしばらくぶらんこで遊んだ後、家に帰った。まだお母さんは帰っていなかった。
 自分の部屋の机の抽斗から、表紙に「アリ」と書かれたノートを取り出して広げ、今日踏み潰した蟻は一匹なので、そこに書かれている「正」の字に線を一本書き足した。
 そしてそのノートを台所のテーブルに置いておいた。
 お母さんが帰ってきたら、そのノートを見て、
「今日は蟻を踏み潰したのね」
 と思うだろう。
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