風にそよいで
文字数 300文字
我が家の庭には剃刀の木が生えている。毎年夏になると新鮮な剃刀が何本も枝に生り、風にそよいで揺れる。朝の庭に出てその中から一本もぎ取り、ピカピカの刃を朝日にきらめかせながら髭を剃るのが、ここ数年の僕の夏の愉しみだ。
しかしある晩夏の夕暮れ時、飯を食べていると、家を数人の警官が訪ねてきた。
「何用ですか」
妻が怪訝そうに訊くと警官の一人が、
「少女を捜している」
と言った。
「昨夜その子がお宅の剃刀の木を見つめているのを見た人がいまして」
「心当たりはない」
と告げると警官は帰っていった。妻が不気味がったので、木に生っている剃刀を全部もぎ取って捨てた。
翌朝、丸裸の木を見て、僕はしばらく呆然としていた。
しかしある晩夏の夕暮れ時、飯を食べていると、家を数人の警官が訪ねてきた。
「何用ですか」
妻が怪訝そうに訊くと警官の一人が、
「少女を捜している」
と言った。
「昨夜その子がお宅の剃刀の木を見つめているのを見た人がいまして」
「心当たりはない」
と告げると警官は帰っていった。妻が不気味がったので、木に生っている剃刀を全部もぎ取って捨てた。
翌朝、丸裸の木を見て、僕はしばらく呆然としていた。