秋の日の出来事

文字数 291文字

 ある秋の日、ホームレスは拾った新聞紙を読んでいた時、かつて勤めていた会社で副社長の座を争っていた男が死んだことを知った。葬儀は明日行われることになっていた。
 ホームレスは公園の住処に帰り、一番綺麗なコンビニ袋を取り出し、ペンでその袋に「御香典」と書いた。そしてその袋を持って外へ出た。
 ホームレスは公園の木の、紅葉した葉を枝からむしって、次々とコンビニ袋に入れていった。昔、会社の慰安旅行で訪れた山で、あいつが紅葉に見とれていたことを思い出したからだ。
 翌日、ホームレスはその袋を持って葬儀会場を訪れた。葉の詰まった袋は受け取ってもらえなかったが、あいつの奥さんは涙を流していた。
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