第4話

文字数 315文字

朝から茹だるような暑い日、健太は畑の端にある梨の販売所で店番をしていた。両親は農協へ行っている。
このような場合は、健太が客から金を受け取り、あらかじめ袋詰めされた梨を渡すのである。袋数と金額はノートに付けておく。後で母親からちょっとしたお小遣いを貰えるので、毎年の夏休みのアルバイトのようなものであった。

健太がドライヤーで蝉を焼き殺しているとき、ひとりの老人が入ってきた。
小学校前の文房具店の清水さんだ。

「健太、朝からよう暑いのう。梨を2袋、くれや」

健太は清水老人から千円札を受け取り、2袋の梨を渡した。
老人は、販売所の床に転がった蝉の死骸を見下ろした。

「わしの兄ィも、こんなふうに焼かれて死んだんかもなあ」
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