第5話
文字数 288文字
「おじいさんに、お兄さんがいたの?」
「そうや。戦争でペリリュー島に行って、それきりや」
毎年、今の時分になったら、テレビで南の激戦地の特集をやりよる。アメリカが、火炎放射器の炎を防空壕に突っ込んで、中にいる日本兵を豪快に焼いとるやつや。わしはあの映像を見ると、胸がたまらんなる。わしの兄ィも、あれで、真っ黒焦げになるまで焼かれたのかもしれん。……
健太を非難する様子は微塵も感じられなかった。清水老人は、誰に言うでもない、独りごとを呟くような調子で、語っていた。
話し終わると老人は、ほなおおきに、と言って、販売所を出て行った。
健太はそれから、蝉を殺すのをやめた。
「そうや。戦争でペリリュー島に行って、それきりや」
毎年、今の時分になったら、テレビで南の激戦地の特集をやりよる。アメリカが、火炎放射器の炎を防空壕に突っ込んで、中にいる日本兵を豪快に焼いとるやつや。わしはあの映像を見ると、胸がたまらんなる。わしの兄ィも、あれで、真っ黒焦げになるまで焼かれたのかもしれん。……
健太を非難する様子は微塵も感じられなかった。清水老人は、誰に言うでもない、独りごとを呟くような調子で、語っていた。
話し終わると老人は、ほなおおきに、と言って、販売所を出て行った。
健太はそれから、蝉を殺すのをやめた。
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