魔法少女の秘密

文字数 1,745文字

やめなさい! やめなさいったら!
ドンドン!

拳を固めてガラス壁を何度も叩くミサキ。しかし、壁面はビクともしないばかりか、向こう側の誰にも物音が伝わっていないようだ。
ゲヒヒッ……おっ、おおう、そうや! 舌を……もっと、奥まで入れてや! マリヤちゃんが心を込めてお掃除してくれるから、おっちゃん毎日よーさんウンコ出せるんやで……フヒヒッ!
マリヤちゃんのお通じはどうだい? キュッと締まってピンク色した、この可愛いらしい穴じゃあ、ウンチしてる所なんて、とても想像できないよ!
高く持ち上げられたマリヤの尻に、指を入れてほじりつつ若い男が顔を近づけチョブチュバと下品な音を立てて吸引する。

すると彼女は大きな卵のような白い肉を震わせて身悶えするのだ。
あああっ、ああんっ! そんなっ! いやらしいこと……言っちゃ、嫌ぁ……
先輩、せんぱいっ! マリヤさん!
ガラス面に鼻をつけ、声も枯れよと叫ぶミサキ。しかし、届かない。

と、そこに背後から声がした。
ゲコッ……騒ぐのはご遠慮願いたいゲロ、お客様……
え……?
ん、お客様じゃないケロか?
振り向くとそこには一人、カエルのような顔をした……いや、カエルだ。

離れた左右の巨大な眼、大きく裂けた口。
紛うことなきカエルの頭部をもった背の低い人間がいた。
まっ……魔物!?
ミサキは悲鳴を上げたいのをグッとこらえて、精一杯の勇気で睨み返す。しかし、返って来たのは間延びした呑気な口調の答えだった。
違うケロ。この館のオーナーだケロ。
……オーナー?
言われてみれば、魔物とは『物』がベースとなった姿なのだから、明らかに『カエル』がベースとなった姿のこの怪人物とは違う気がする。

しかし、一体何を言っているのか見当がつかない。
そうケロッ……ここは、正義の心を持った思春期の少女にしか見えない、魔法少女の館。そのオーナーだケロ!
少女って……あっ、あの人たちは!
ガラスの向こうを指さすミサキ。
あれはお客様ケロ……魔法の力は癒しの力。でも、使えば消費してしまうケロ。だからここでお客様を、自分の肉体で癒して魔力を回復するケロ!
どこが癒しなの! やめさせて!
と、再びミサキはガラスを破壊しようとする。今度は蹴りだ。

だが、結果は変わらなかった。ビクともしない。
無駄ケロ! それは魔法のスクリーンだケロよ! それに、マリヤはそんなこと望んでないケロロ!
嘘よ! 先輩がこ……こんなことっ……好きでやってるわけない!
魔法のスクリーン――とは全然見えない。

まるで本当にすぐその向こうに人が息づいてるかのような情景の中で、マリヤが二人の男から尻孔をぐばっと拡げられて身体を反り返らせていた。
うりゃ、うりゃあ! マリヤちゃんのケツ穴、もうトロットロや! マン汁も良い具合に擦り込んだるわ! どやあ! 気持ちええやろ! 言うてみんかい! この変態魔法少女が!
あぐううっ! ゆ、許して……あああ、感じますっ! で……でもっ……変態なんかじゃ……嫌、ああああ……
ククッ、変態じゃなくてお金の為にやってんだよな。咥えろよ。嫌な顔しながら丁寧にしゃぶるんだぜ。
ううう……
身をくねらせる美少女の羞恥に歪んだ顔。屈辱に頬を伝う熱涙。

とても、望んでしている事とは思えない。
……マリヤは偉い子ケロ。
カエルがポツリと呟いた。
こんな思いをして魔法少女をやる子をこれ以上、増やしたくないんだケロ。だから、無理してあんなプレイまで……そうやって魔法の力を沢山貯めて、自分一人だけで魔物と戦ってるケロ。
そんな……!
魔法少女は、あなたが考えているより過酷なものよ……
そう言ったあの寂しげな横顔。

ミサキは言葉を失った。そんな真実が隠されていたなんて思いもしなかった。
あまりの事に立ち尽くす。

だが……それでも……「マリヤを手伝いたい、助けたい」という最初の想いは失われなかった。

それが意味する事がわかっても。
私も……なれる?
その瞳に、持ち前の正義の光が灯る。

真実を知っても、たとえそれが淫らな地獄の様なものであったとしても、いや、だからこそ、マリヤの苦しみを同じように味わってでも、支えたい。
ほ……本気かケロ!?
本気よ。
そして、終わらせるのだ。

マリヤの――否、全ての魔法少女たちの苦しみを。

そう心に決めた。もう、何も怖くない。
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登場人物紹介

海鳴岬うみな・みさき)

正義感が強くて勝気な普通の少女。
悪を見過ごさず立ち向かう勇気と、他人を見捨てない優しさ持つ。
魔法少女ミサキとして「魔」と戦う決意をするが……。

神居真理弥かむい・まりや)

ミサキと同じ学園に通う上級生。
美人な上に成績優秀で清楚な、全校生徒の憧れ的存在。
正体を隠して魔法少女マリヤとして「魔」と戦う日々を送っている。

夏奈(なつな)

ミサキの親友。

樹里(じゅり)

ミサキの親友。

家谷(いえだに)

ミサキの同級生。卑怯な性格で学園の鼻つまみ者。

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