魔法少女の査定

文字数 2,103文字

魔法少女に変身して魔法を使うためには癒しの力、キュアーが必要ゲロ!
……。
別室に通されたミサキは、卵の殻の様な形をした半球形の大きな一人掛けのソファーチェアに腰を下ろし、緊張した顔のまま説明を受けていた。

オーナーの手に握られているのは、先ほど渡したミサキのスマホだ。
キュアーは客が感じた快感に応じて自動で支払われる電子魔法通貨でもあるケロ。それを受け取るためのアプリをこれからインストールするケロン。
物には心が宿る。

個人と強く結びつくスマホに魔法のアプリを入れることで、ミサキを魔法少女――男を悦ばせる対価として魔力を得る『魔法娼婦』へと生まれ変わらせるのだという。

より多くの淫らな行為をすればそれだけ沢山のキュアーが貯まり、強力な奥義の発動が可能になる。また小出しなら何回も魔法が使えるというわけだ。
(そして、一人で戦う決意の為に……マリヤさんはあんな事を)
望まぬ奉仕にその身を犠牲として、それでも挫けず、人々を救うために魔物を退治し続ける――いったいどれほどの時間をそうして過ごしたのだろう。

その孤独を想うと背筋がゾッとする。

放っておくことなど、できはしない。
(……必ず、私が!)
ところで、ミサキは処女ケロか?
しょっ……なっ、なんですって!?
突然の不躾な質問に顔を赤らめる。
処女の方が魔力が沢山貯まるケロ。
そ、そう……でも、そんなの、答える必要ないでしょ!
デリカシーのない質問に、怒るふりでドギマギする胸の内を隠そうとする。
違うケロ。アプリを通りしてお客を取るには処女かどうかが大事ケロ!
カエルのオーナーは、世間知らずを相手にしたときのような困り顔をしてみせた。
処女喪失は一回きりの商品ケロ! しっかりと商品案内に登録するケロ。
しょっ……
商品、という言い方が胸に刺さる。

改めて自分が踏み込もうとしているのが非情な世界だと突きつけられた気分だった。

自分の大切な純潔――それを平然と売り物呼ばわりされたのだ。

絶句する彼女に重ねて問うカエル。
バージンだったのに、普通の値段で挿入されちゃったというのではもったいないケロ! 答えるケロ!
ぐっ……
言い淀み、しかしそれでも、相手の理屈の正しさはわかる。
ま……まだ、経験したことなんか、なっ……ないわ。当たり前でしょう!
最近の子はそーでもないケロから、お客も疑り深いケロロ。確かめるケロ!
と、大きな口から長い舌がいきなり伸び、ミサキの脚の間へと潜り込んだ。
い……嫌ぁっ! 何するの!
慌ててスカートを押さえつけるも、うねうねと動く舌先がたちまちのうちに股間を探り当てて、ズロリと気味悪くショーツ越しに舐め上げる。
やっ……駄目ええぇぇっ!
粘液でベトつくその生温かい肉を、思わず掴んで引き抜き、投げ捨てると、弾みでその場に転倒するオーナー。
なっ、何するケロッ! 痛いケロ!
ごっ、ごめんなさい……!
処女膜を見せるケロ。そしてそれを撮ってアプリで流すケロロ! そうすれば処女好き、新人好きの客がすぐに取れるケロ! キュアーも沢山貯まるケロ……全部ミサキの為ケロッ!
ううっ……で、でも……
されるのが嫌なら自分でするケロ! 知らないケロ!
プリプリしながら起き上がるカエル。

どうやら、いやらしい考えは持っていないらしい。

彼は何者なのだろうか。魔法の世界の住人? 少なくとも日常とはかけ離れた存在ではあるようだ。
わ……わかったわ。その……みっ、見せれば……い……いいのね?
承服の言葉。

だが、カラカラに乾いた喉のせいで声がかすれる。早鐘のように鳴り響く鼓動。
(ああ……胸が張り裂けてしまうそう)

そうケロ……それをミサキのスマホで撮影して、アプリで顧客全員にお知らせするゲロリン。
(本当にそんなこと……! 自分の一番恥ずかしい部分を……晒すなんて。そんなこと、そんなこと!)
それも、顔も知らない大勢の男の人たちに……!

ミサキの脳裏にさきほど目にしたばかりの「客」の男たちの、下卑た顔が浮かぶ。あんな風に、自分の姿を眺められるなんて想像しただけでも身の毛がよだつ。

しかし、同時に思い出されたのは、彼らに責められながらも必死に耐えるマリヤの姿だった。
……。
(そ……それに比べたら……くっ)
ミサキは目を閉じた。

そして、ためらいながらもゆっくりと、時間をかけてスカートの下に手を伸ばす。
(自分の家で着替えるのと同じ……同じ……)
ドキドキと心臓が高鳴り、鼻の先がツーンとするような感覚。
(ああ……同じじゃないよ! 全然違う!)
それでも、指に掛けた下着を降ろす。そうするしかないのだから。
う……ううっ……
可愛らしい、水色の縞々のパンツが膝頭の位置までずり降ろされた。
そこから先は座って脱ぐケロ! 脚をちゃんと開いて……
ああ……そんな……
言われるがまま、卵の殻の内側に身を委ねて深く椅子に座り、自分の足を左右に持ち上げる。
(なんて……はしたない……恥ずかしい格好……ああ、おかしくなりそう!)
閉じた瞼を屈辱に震わせ、向けられたカメラのレンズから顔を背ける。

ショーツが足を抜け、描かれたM字の中心には誰にも見せたことのない、一番秘めやかな肉の筋が隠されぬままに晒されてしまっていた。
あ……ああ……嫌ぁ……。
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登場人物紹介

海鳴岬うみな・みさき)

正義感が強くて勝気な普通の少女。
悪を見過ごさず立ち向かう勇気と、他人を見捨てない優しさ持つ。
魔法少女ミサキとして「魔」と戦う決意をするが……。

神居真理弥かむい・まりや)

ミサキと同じ学園に通う上級生。
美人な上に成績優秀で清楚な、全校生徒の憧れ的存在。
正体を隠して魔法少女マリヤとして「魔」と戦う日々を送っている。

夏奈(なつな)

ミサキの親友。

樹里(じゅり)

ミサキの親友。

家谷(いえだに)

ミサキの同級生。卑怯な性格で学園の鼻つまみ者。

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