第18話  友情

文字数 968文字

「確かにさくら様のご両親の協力が得られたとすればこんなに心強いことはありません。けれど、慎重に事を運ぶ必要があります」
佐藤の言い分は正しかった。さくらの両親がどんな立ち位置を取るかは不明だ。さくらは300年もの間、生き抜いてきた大きな財力を持つ一族の娘だということを忘れてはならなかった。
「さくらは僕たちの仲間なんだ」
僕は佐藤に激しく詰め寄った。一真が間に入って
「さくらの事は慎重に決めよう。今は丈と美由紀の安全が第一だ」
佐藤はうなずきながら静かな調子で言った。
「丈様、美由紀様と協力関係を持とうとしていることに敵はまだ気づいていません。ただ、新様が彼らと交友関係をもったことは重要視しているはずです。早急にお二人を彼らの手の届く寮から出す必要があります」
「丈と美由紀を一真や僕の家に招けば、敵に警戒されそうだ」
僕らは学校で話をするしかなかった。
「さくらに聞かれないためにはあかりの協力が必要だな」
一真の提案に僕たちはうなずいた。
心地よい秋の風が吹く屋上で僕と一真は丈と美由紀に話をすることになった。
あかりは一真の事で相談があるとさくらを連れだしている。
僕たちは動画を見ながら今までの事を説明した。
丈と美由紀は意外にもすんなり僕たちの話を受け入れてくれた。
「日本に来る前、僕たちは両親から海外に移住したわけを聞いていたんだ」
「私達は新の様子を両親に話してみたの。お父様が取りつかれたように徐福計画にのめりこむまで、4人はちょうど私達のように気の合う仲間だったそうよ」
「僕たちは新や一真と君たちのお父様を信じるよ」
「私も協力するわ」
あかりが引き留めていたはずのさくらがすぐそこにいた。
「ごめん」
さくらの後ろにいるあかりが申し訳なさそうに小さな声で謝った。
「私の両親は新のお父様のこともう知っているの。娘の私の交友関係に無頓着なはずないでしょう。私の両親もあなたたちの味方よ。それにあかりが一真の事で相談があるなんておかしな話よね」
さくらはいつも自分の事しか考えていないようで僕たちの事を誰よりよくわかっていたことに僕は今気づいて、恥ずかしいと思っていた。
美由紀と丈の両親への報告などやることはたくさんあった。
何よりも敵に気付かれないように、自然に滞在先を決めること、そしてそこへ移動することが必要だった。
僕たちは佐藤に相談することにした。
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