文字数 955文字

まいどありがとうございます、『ひなたや食堂』です!
……はい、出前の注文ですね?
オムライスをひとつ、天空神殿エルヴァラまで!

だ・い・し・きゅ・う~!
あいにくですが、異世界は出前のエリア外ですので!
がちゃり。

…………。

ジリリリリリ♪ ジリリリリリ♪
まいどありがとうございます、ひなたや――
ジンどの、後生です。
あの味が忘れられないのです。
せめてあと一度だけでも……
パヤッタさん。
きのう、あれで最後にするって約束しましたよね。
このままでは空腹のあまり、私の中に封印されている召喚獣たちが暴れ出して、世界を滅ぼしかねません。

どうかこの世界を救うというお気持ちで、オムライスをひとつ……大盛りで!
……本当に、これっきりにしてくださいよ?
わーい、やったー!
デマエジンソクでお願いしますね!
 迅一郎は電話を切ると、手早くオムライスを作って銀色のおかもちに入れた。
ごめん、ばーちゃん。
ちょっと出前に行ってくる。
はいよ、気をつけてね。
どこまで行くんだい。
異世……イセハラくんち!
(あぶない、口がすべるところだった……)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ええと、パヤッタに教えてもらった転移魔法は……ごにょごにょ……っと。
異世界も三度目となれば、慣れたものだなあ。
入口はたしかこっちに……
くっくっく……この神殿に人間が訪れるのは200年振りか。
血が騒ぐのう、姉上!

賢者パヤッタさまに謁見されたいのであれば、まずは我ら『飛龍姉妹』にその力を示しなさい。
まいど、出前のひなたやっす。
なんだ、誰かと思えば件の飯屋か。
がっかりさせおって……ほら、さっさと入れ。
パヤッタときたら『オムライス、オムライス』とうるさくてかないません。
なんとかしてくださいな、オムライスさん。
俺の名前はオムライスじゃありません。
神殿の扉が、ずごごごごご……と音を立てて開く。

迅一郎は長い通路を歩いていった。

オーロラのような垂れ幕のかかった玉座の前で、うろうろと歩き回る人影があった。
お待ちしておりました、ジンどの!
はい、まいど。
オムライス大盛りで。
~~~~~~~~~♡♡♡♡
なんと美しい!
このまま未来永劫眺めていたい心持ちです!

そしてこの大きさ、きのうの倍以上あるのでは!?
ええ、これが『最後』なので特別サービスです。
いっただきまーす!

もぐもぐ……

ん~~~~~~~っっっ!♡♡♡
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登場人物紹介

名前:日向屋迅一郎(ひなたや じんいちろう)

 東京下町にある大衆食堂『ひなたや』の四代目。
 日中はお店で働き、夕方からは定時制高校に通っている。

名前:パヤッタ

 異世界の賢者さま。
 その小さな体に、多くの召喚獣を封印している。

名前:ネエネエ

 パヤッタが暮らしている神殿の門番。
 面倒見がいいけど怒ると怖い。

名前:リャンリャン

 パヤッタが暮らしている神殿の門番。
 喧嘩っ早いけれどお姉ちゃんっ子。

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