文字数 412文字

ごちそう……さまでした。
ではパヤッタさん。

今度こそ、出前はこれで最後だと誓ってもらえますね。

……はい。

賢者パヤッタの名にかけて、二度と……。

ぐすっ……

(ああもう!)

(なんで俺が悪いことをしている気分になるんだ!?)

迅一郎は空になったお皿をおかもちにいれて、パヤッタに背を向けた。

元の世界に戻る呪文を唱えると、視界が光に包まれた。

ふう……

ただいま。

おや、ジンちゃん。

なにかあったのかい?

えっ?
いまのジンちゃん、あの時と同じ顔をしているものだから。
あの時って……
拾ってきた子猫を、元の場所に戻しにいったときの顔だよ
迅一郎は幼いころ、子猫を拾って帰ったことがある。

そのとき両親に、きつく教えられたのだった。


人間の餌やぬくもりを与えてしまっては、子猫は野生で生きていくことが出来なくなってしまう。

子猫の一生に責任を持つことが出来ないのであれば、中途半端に優しくしてはならないのだと。

……なんでもないよ。

じゃあ俺、学校の準備するから。

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登場人物紹介

名前:日向屋迅一郎(ひなたや じんいちろう)

 東京下町にある大衆食堂『ひなたや』の四代目。
 日中はお店で働き、夕方からは定時制高校に通っている。

名前:パヤッタ

 異世界の賢者さま。
 その小さな体に、多くの召喚獣を封印している。

名前:ネエネエ

 パヤッタが暮らしている神殿の門番。
 面倒見がいいけど怒ると怖い。

名前:リャンリャン

 パヤッタが暮らしている神殿の門番。
 喧嘩っ早いけれどお姉ちゃんっ子。

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