第14話

文字数 601文字

 僕はまず手に入れた住所に池田さんの親が住んでいるかを確かめるためにA市の中央図書館に行った。スマホで地図を見ながら着いた図書館は割と大きく建物自体は古いが清潔な感じのする図書館だった。僕はさっそく中に入り、電話帳を探し、A市の最新のハローページを見つけた。池田はありふれた名前なので探すのは大変だったが、ようやく住所と電話番号が一致する池田さんを見つけた。僕は嬉しくなりその場で電話したくなるほどだったが、怪しまれないように考えている作戦があるので焦る心を落ち着かせて図書館を後にした。その日の夜、僕はスマホでネットの印刷所に名刺を作るように依頼した。山本興信所、田中井裕也と適当な住所に電話番号の偽物の名刺を作った。僕は探偵を装って矢早さんの自殺の件を調べていると電話を入れる作戦を立てたのだ。しかし、リスクもあった。池田さんの親が池田さんの連絡先を教えてくれないとか、教えてくれても遠方に住んでいるとか。それでも僕はやらざるを得なかった。矢早さんの『声』を聴くためにも。社会人らしい服は入学式のときに来たスーツやカバンがある。一応変装のための伊達の黒縁眼鏡も黒いキャップも近所のスーパーの百円均一コーナーで買ってきた。あとは実際に池田さんに会えた時のためのICレコーダーだが、これは大学生協で安いのが売っているのも確認済みだ。あとは実際に電話をかけるだけ。僕は平日の夜に電話をかけることに決めた。
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