極の顕性。殊塗と同帰、患い
文字数 907文字
たった一人で世界に産み落とされた彼女を世界は護っている。
国に、摂理に、価値に、あらゆる事象を以って不安定で不完全な彼女の存在は均衡を保っている。
長らく足を止めていた”人間”としての種の本能の晨朝であり、彼女は狂っていた。
「・・・・」
地に伏す人間らしき生物を横目に思考を巡らせる。言葉を持たず生まれ、言葉を必要とせずに10年を過ごしてきた彼女に言語は存在しない。しないがならも施設を可能な限り使い続けられてこれたのは、人類の元来から持っていたであろう百折不撓の精神だろう。
森には何がいるのだろうか。地下には何が埋まっているのだろうか。ずっと寝ている彼らは何者なのだろうか。何故植物を育てるのだろうか。いろいろな事への探求心は絶えず、彼女を奮わせた。
しかしついに、海の向こうには何があるのだろうか。
ふとそう思ってしまった
これまでの調査は新人類の保全する領土内のみで完結していたが、海の向こうには何があるだろうか。
その遥か先、祖人類の住まう大陸がそこには在る。
彼女はそんなこともつゆ知らず、海の向こうを見てみたいという好奇心、探求心のままに突き動かされる。
生物調査用研究船の操縦は基本AIが行っており、それに特化した言語を用いることで最適化されている。
驚くことに彼女は複雑な言語を数週間足らずで解読、理解した。
命令を加え、地図を読み取り、周辺地域の情報を更新した研究船は彼女に膨大な情報を見せた。
大陸を超えて、祖人類への邂逅を果たす。それをただ一つのゴールとした。
無言で只管に進捗をなぞる。無限にも思える膨大な人類の積み重ねは彼女にしてみれば、朝に軽く行う運動程度の大変さであろうか。
準備を悉皆すまし、船内のある部屋にたどり着く。
まただ。あの植物。何故そこにあるのだ。
以前の人々はなぜこの
木箱に大量の赤が敷き詰められている光景を前に、彼女は解さないでいた。
邪魔なものはすべて船から下ろした後だったが、何故だかこの赤い塊は持っておきたかった。
明日からはこの船のログに残っている航海航路履歴のうち
彼女にはただ夜明けを待つだけの退屈な時間だ。
国に、摂理に、価値に、あらゆる事象を以って不安定で不完全な彼女の存在は均衡を保っている。
長らく足を止めていた”人間”としての種の本能の晨朝であり、彼女は狂っていた。
「・・・・」
地に伏す人間らしき生物を横目に思考を巡らせる。言葉を持たず生まれ、言葉を必要とせずに10年を過ごしてきた彼女に言語は存在しない。しないがならも施設を可能な限り使い続けられてこれたのは、人類の元来から持っていたであろう百折不撓の精神だろう。
森には何がいるのだろうか。地下には何が埋まっているのだろうか。ずっと寝ている彼らは何者なのだろうか。何故植物を育てるのだろうか。いろいろな事への探求心は絶えず、彼女を奮わせた。
しかしついに、海の向こうには何があるのだろうか。
ふとそう思ってしまった
これまでの調査は新人類の保全する領土内のみで完結していたが、海の向こうには何があるだろうか。
その遥か先、祖人類の住まう大陸がそこには在る。
彼女はそんなこともつゆ知らず、海の向こうを見てみたいという好奇心、探求心のままに突き動かされる。
生物調査用研究船の操縦は基本AIが行っており、それに特化した言語を用いることで最適化されている。
驚くことに彼女は複雑な言語を数週間足らずで解読、理解した。
命令を加え、地図を読み取り、周辺地域の情報を更新した研究船は彼女に膨大な情報を見せた。
大陸を超えて、祖人類への邂逅を果たす。それをただ一つのゴールとした。
無言で只管に進捗をなぞる。無限にも思える膨大な人類の積み重ねは彼女にしてみれば、朝に軽く行う運動程度の大変さであろうか。
準備を悉皆すまし、船内のある部屋にたどり着く。
まただ。あの植物。何故そこにあるのだ。
以前の人々はなぜこの
赤い塊
をこれほどまでに集めていたのだろうか。木箱に大量の赤が敷き詰められている光景を前に、彼女は解さないでいた。
邪魔なものはすべて船から下ろした後だったが、何故だかこの赤い塊は持っておきたかった。
明日からはこの船のログに残っている航海航路履歴のうち
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ログをもとに、华の大陸へ旅立つ。彼女にはただ夜明けを待つだけの退屈な時間だ。