帰趨。種の憐憫と囚われの姫
文字数 1,114文字
昇る蒼い光が何度か日を刻んだ頃
相も変わらずの空虚な水平線に終わりが見えた
彼女は毎日のように目くるめく海の神秘を慈しんだ。
と言うよりそうするしか暇を持て余せなかった。
森羅を介して生命を覚え、身を置く環境を知った。
ついに知ることも少なくなってきたちょうどいいころ合いに、水平線に終焉が訪れたのだ。
なんてことない岩場に船を止め、岩礁から無理に陸地に上る
かつて自分がいた陸地とそう大差ない閑散とした風景だ。
少し期待外れな気もしながら、しばらく歩くことにした。
数十時間歩いたところで遠目に木造の屋根が確認できる。
道と言う道もなく、廃れているようにも見える小さな集落のようだが、とりあえずそこへ向かうことにしよう。
彼女は集落に向かって、1時間くらい歩いた頃だろうか、遠巻きにカタカタと物音が聞こえた。
ほんの僅かな音を聞き逃さなかった彼女は、急いで音のする方へ向かって走った。
______________
冬が終わりを迎え、雪が解け、川に清流が取り戻された。
溽暑の灼くる気が肌に不快感を与える。
冬が明けるとなんですぐに熱くなるのだろうか。
母はとうになくなってしまったが、私には家族がいる。
集落の人々は私の家族のように親しくしてくれる。
「おはようございます...」
眠そうに挨拶をする少女に、老人が返す
「あぁ、おはようネイカ」
少女と挨拶を交わす彼は集落の長で、名をテウラという。
テウラは集落をつくった初代テウラの孫にあたる、3代目の集落の長であるが父親の代で起こった疫病にやられてしまい大幅に数を減らしてしまった。
集落に残っている人々は合わせても十数人程度で、粗末な家が5軒程建っているばかりである。
「この冬も厳しかったが...こう寒暖差が厳しいようだとここも長くは持たないだろう...」
「しかし、あの子を一人にさせるなんて私たちには出来ないでしょう」
杖を着き集落の将来、少女の未来を話す長とその妻。
しかしその会話を遮って森から轟音が響く。
「なんだ...今の音は...」
「むこうの方から聞こえたけど...」
そう言って川を挟んで向こう岸の森を指さした
集落は少し高い立地にあるため周囲が見渡しやすいのが幸いして、すぐに音の原因が分かった。
ここら一帯は太い針葉樹の森になっているはずだが、その木々が大きく揺れている。
さらにその揺れはどんどんこちらへ近づいてくる。
何人かの住人が気づいたらしく、すぐに大声で
「何かやばいのが来た!家にいら奴らは隠れていろ!力のある者は長の家に集まってこい!」
と招集が下った。
長の家に集まった力のある者。力のあると言ってもほとんどが中年層の男が三人だけだ。
彼らも怯えながら音の方へ向かった。
音の主は集落に一直線に向かってくる。
相も変わらずの空虚な水平線に終わりが見えた
彼女は毎日のように目くるめく海の神秘を慈しんだ。
と言うよりそうするしか暇を持て余せなかった。
森羅を介して生命を覚え、身を置く環境を知った。
ついに知ることも少なくなってきたちょうどいいころ合いに、水平線に終焉が訪れたのだ。
なんてことない岩場に船を止め、岩礁から無理に陸地に上る
かつて自分がいた陸地とそう大差ない閑散とした風景だ。
少し期待外れな気もしながら、しばらく歩くことにした。
数十時間歩いたところで遠目に木造の屋根が確認できる。
道と言う道もなく、廃れているようにも見える小さな集落のようだが、とりあえずそこへ向かうことにしよう。
彼女は集落に向かって、1時間くらい歩いた頃だろうか、遠巻きにカタカタと物音が聞こえた。
ほんの僅かな音を聞き逃さなかった彼女は、急いで音のする方へ向かって走った。
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冬が終わりを迎え、雪が解け、川に清流が取り戻された。
溽暑の灼くる気が肌に不快感を与える。
冬が明けるとなんですぐに熱くなるのだろうか。
母はとうになくなってしまったが、私には家族がいる。
集落の人々は私の家族のように親しくしてくれる。
「おはようございます...」
眠そうに挨拶をする少女に、老人が返す
「あぁ、おはようネイカ」
少女と挨拶を交わす彼は集落の長で、名をテウラという。
テウラは集落をつくった初代テウラの孫にあたる、3代目の集落の長であるが父親の代で起こった疫病にやられてしまい大幅に数を減らしてしまった。
集落に残っている人々は合わせても十数人程度で、粗末な家が5軒程建っているばかりである。
「この冬も厳しかったが...こう寒暖差が厳しいようだとここも長くは持たないだろう...」
「しかし、あの子を一人にさせるなんて私たちには出来ないでしょう」
杖を着き集落の将来、少女の未来を話す長とその妻。
しかしその会話を遮って森から轟音が響く。
「なんだ...今の音は...」
「むこうの方から聞こえたけど...」
そう言って川を挟んで向こう岸の森を指さした
集落は少し高い立地にあるため周囲が見渡しやすいのが幸いして、すぐに音の原因が分かった。
ここら一帯は太い針葉樹の森になっているはずだが、その木々が大きく揺れている。
さらにその揺れはどんどんこちらへ近づいてくる。
何人かの住人が気づいたらしく、すぐに大声で
「何かやばいのが来た!家にいら奴らは隠れていろ!力のある者は長の家に集まってこい!」
と招集が下った。
長の家に集まった力のある者。力のあると言ってもほとんどが中年層の男が三人だけだ。
彼らも怯えながら音の方へ向かった。
音の主は集落に一直線に向かってくる。