種の隔たり。霄壌にして超え難し

文字数 1,050文字

『アルコーン』
この世界にはそう名付けられた種族が存在する。
人間の数と同程度だろうか、今や世界の半分は其れ等(アルコーン)に支配された領地と化している。
われわれ人間はいつから其れ等(アルコーン)と相対することとなってしまったのだろうか。


約1000年前...突如として齎された遺伝制御技術によって世界には強化人類及び新人類とも呼ばれる人間が数多く出現した。
彼らは遺伝子を優れた人間からコピーした”種”(シード)を用いてより強い部分を掛け合わせた人間を量産し、完全なる優生思想の成功を果たすこととなる。

遺伝子制御技術に不信感を募らせた祖人類(ルーツ)と、技術を可能な限り最大限に利用し尽くした新人類(ディバイン)に大別され、世界をそれぞれの種族で住み分ける結論を出した両種族は、不可侵を絶対の原則として互いの干渉を禁忌とするという選択に至った。

祖人類は諸事項前後で変わらず今まで通りの生活に戻り、順調な発展を遂げたが、

一碧萬頃の先、新人類は驚異的な加速度で進化を続けていた。
10年 — 遺伝子を複雑につなぎ合って不安定なキメラを精製
50年 — 人間以外の生物の細胞を組み込み始める。進化専用の超短命種族の製造
100年 — あらゆるウイルス、感染症の克服。寿命の克服。自己再生能力の臨界
彼らはたった百年余りで寿命を超え、完全な生命へと成った。

しかし、寿命を克服したことを起点に、彼らは個体数の増加を大きく減らすこととなる。
種の多様化を進めていた時期はとてつもない速度で爆発的に増加していた個体数も、”完成”を期に多様化は完全に停止し、動物としての種の存続の本能は消え去ってしまったのだ。

見る見るうちに増加は止まってゆく。
ある時、増加が0を記録したタイミング、その瞬間。何かを示し合わせたかのように。
次々と彼らの種族は眠りついてしまう。眠ったまま起きることはなく、完全に停止したっきり起きることもない。死を超越し、完全な生命と成った新人類は、起きる必要がないと判断し睡眠をし続けるだけの肉塊へと変わってしまったのだ。

活動者が1%を切って間もなく、一人の科学者があることを考案、実行した。
完全な生命と成った彼らから、人間の染色体だったもののみを集め、それらを集積させることで、人を取り戻すというものだ。
種の進化を目的とした遺伝子制御技術の行き着く先は皮肉にも人間を取り戻すことだった。

新人類の人類の部分のみを集めることで生まれたそれは、果たして人と呼べるのであろうか。
一抹の不安もつかの間、たった一人取り残し、どの時代よりも無秩序で混沌とした100年ほどの文明は幕を閉じた。


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登場人物紹介

メリア(パラレル)

キャラ設定に存在するメリアの平行世界の姿

遺伝子操作によって一から作られた存在で、生物的には非常に不安定。

音声を声、言語として識別することに慣れず、ジェスチャーから覚えた。

文字はほとんどの言語を理解し、読み書きができる。

戦闘能力には長けているが...

リュオン(オリジナル)

メリアが初めて出会った祖人類の集落の一員。

狩り、建築などの仕事は一通りできる。

空間把握には長けており、メリアが初めて集落に突っ込んできた際も音と方角のみで招集をかけて臨戦態勢を組んだ。

ネイカにとって一番身近な保護者的な役割もこなしており、学もないことはない

使える得物は剣と弓。

不得手なのは料理。味音痴

ネイカ(オリジナル)

集落の子供で一番若い。

この子を最後に集落は途絶える。

好奇心旺盛で恐怖に鈍いため勇猛果敢に見えるが、本人が事の重大さを理解していないだけ。

活発に動き回るため成長したら凄腕の狩人にもなれる。

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